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2014年 東北旅行記 Vol.1


車中泊・日本列島第2弾は東北21日間。
石川啄木と宮沢賢治の軌跡をなぞり、厳美渓の空飛ぶ団子にびっくり♪


14/05/08~14/05/28 「道の駅」を基点に南下♪
経費 フェリー代 18,680円(函館→青森)+19,440円(秋田→苫小牧東港)=38,120円
ガソリン代 22,471円
食費 35,026円
風呂代 9,400円
入館料 11,680円
雑費 6,856円
総計 123,553円


旅程
2日目 竜飛岬 青森県東津軽郡
3日目 ●道の駅・いかりがせき 青森県平川市碇ヶ関
4日目 種差海岸 青森県八戸市
三陸鉄道・久慈駅 岩手県久慈市
5日目 小袖海岸 同上
龍泉洞 岩手県岩泉
たろう観光ホテル 岩手県宮古市
浄土ヶ浜 同上
6日目 石川啄木記念館 岩手県盛岡市
7日目 野村胡堂あらえびす記念館 岩手県紫波郡紫波町
宮沢賢治イーハトーブ館 岩手県花巻市
8日目 遠野市立博物館 岩手県遠野市
鍋倉城址 同上
9日目 達谷窟毘沙門堂 岩手県西磐井郡平泉町
10日目 中尊寺 同上
11日目 一関市博物館 岩手県一関市
厳美渓 同上
12日目 毛越寺 同上
猊鼻渓 同上


泊まったところ ●道の駅・浅虫温泉   ゆーさ浅虫 (2013東北旅行記参照) 青森県青森市浅虫
●道の駅・いなかだて(再訪) (詳細は2013東北旅行記参照) 青森県南津軽郡田舎館村
●道の駅・さんのへ 青森県三戸郡三戸町
●道の駅・くじ やませ土風館 岩手県久慈市
●道の駅・やまびこ館 岩手県宮古市
●道の駅・にしね 岩手山・溶岩流の里 岩手県八幡平市
●道の駅・とうわ 毘沙門天と萬鉄五郎の里 岩手県花巻市
●道の駅・遠野 風の丘 岩手県遠野市
●道の駅・厳美渓 もちと湯の郷 岩手県一関市
●あ・ら・伊達な道の駅 宮城県大崎市


風呂 ●道の駅・浅虫温泉 ゆーさ浅虫 詳細は2013東北参照 @350円
●道の駅・いかりがせき 関所にある温泉 @300円
●焼走りの湯 岩手山・溶岩流 @600円
●東和温泉 道の駅・とうわ隣接 @300円
●ほっとゆだ 駅舎内の風呂 @300円
●悠久の湯 平泉 @500円
●藤島旅館 鳴子温泉・・湯治客多し @300円


食べたところ ●シゲちゃん寿司 生握り寿司・爆裂15巻
●かだっ亭 まめぶ汁
●道の駅・にしねのレストラン ひっつみ定食
●レストラン ペッタンくん 和風もちセット


閑話 ●フェリーの文庫本自販
●熊が出たぞ~
●熊本の秋山小兵衛
●コインランドリー


覚書 走行距離 2645km
ガソリン149.48 リットル 23739円

1日目   道の駅・浅虫温泉 泊: 展望大浴場は極楽(詳細は2013東北旅行記)   晴れ
14/05/08 シゲちゃんすし

函館・中島廉売にある立ち食い寿司店。

一番人気は、握り7貫にいなり寿司と鉄火巻きの500円ランチ寿司。はるばる遠方からやって来たのだもの、 ここは奮発して@1200円の爆裂15巻。と大仰に言うのは、こっ恥ずかしい安価。

シゲちゃんは次から次へと押し寄せる立ち食い客をさばきつつ、合間にテイクアウト分を握る。私の爆裂15巻も、1皿5巻づつ登場し食べている間に次の5巻が用意されると言った寸法。小出しのせいか、15巻も食べたのにまだ食べ足りない気分だ。
閑話
14/05/08 フェリーの文庫本自販

フェリーで函館から青森まで、所要時間が3時間40分。寝るには時間が足りない。

取りあえず、無料のシャワーを浴び船内を徘徊。見つけたのがこれ。普通のスナック菓子自販機だが、商品は文庫本。旅の間に読む本を準備出来なかった私は、興味津々。本のラインナップは、先日亡くなった渡辺淳一とか元NHKアナ・住吉美紀とか。軽めの作品。 どれを買おうか?少ない選択肢の中から今若者に絶大な人気の作家・山田悠介「メモリーを消すまで」。前編・後編 全2冊。値段は、巷の書店と同じで良心的だ。

「それ、10代とか20代の若者が絶賛の作品だよ。」と愚息。言下に、私と山田悠介では年代的にミスマッチと。日本の近未来、犯罪防止のため全国民の頭に埋められたメモリーチップ。組織MOCは刑罰として「記憶削除」を執行し、犯罪者を白紙の人間に作り変える。 この作品は、非現実的な設定が命だ。3Dコピーが実用化されている今の時代、近い将来そうならないと誰が言えるのか?権力者なら邪魔な人間を合法的に抹殺する事も可能だ。

ひょんなきっかけで、普段なら手に取る機会がない本に出会った。日本の未来はどうなる。縷々思い巡らせる間に、船は津軽海峡を渡っていく。

2日目   道の駅・いなかだて泊(詳細は2013東北旅行記を)   雨・寒し
14/05/09 竜飛岬

竜飛岬

まずは、竜飛岬へ。物凄い雨と風で、飛ばされそうだ。視界は限りなくゼロに近く、息をするのも難儀。竜飛岬は勿論のこと、太宰治・棟方志功ゆかりの宿「旧奥谷旅館も十三湖も素っ飛ばさざるを得ない天候。残念!

夜は懐かしの道の駅・いなかだて泊。当たり前ながら、昨年の車中泊メンバーがいなく寂しい。(詳細は2013東北旅行記を)。 代わりに会った京都の男性は、キャンピングカーで奥様と2人旅。「気楽な年金生活なので、時間だけはたっぷりありますから。 海岸線伝いに走ると内陸部をスルーしちゃうので、地図をジグザクに走っているます。」それは、私たちも悩む処。
3日目   道の駅・さんのへ泊  雨
14/05/10 道の駅・いかりがせき

青森県平川市碇ヶ関。

行き当たりばったりの旅。この先は、東北を気の向くままに東へ西へ。着いたのが「道の駅・いかりがせき」。全国でも珍しい関所のある道の駅。温泉もある。碇ヶ関関所は、津軽為信公が天正14年(1586年)に、秋田比内の浅利氏攻略と南部藩の攻撃に備え開設。現在の関所は、中の番所があった所に昭和59年復元。

「朝から湯浴み?」と言いつつ、温泉に目がない家人に従う。入浴@300円。

泉質:単純温泉  低張性弱アルカリ性低温泉  加温かけ流し・うっすら黄色透明 ぬるっと肌に纏わりつく
閑話
熊が出たぞ~

今や三陸河岸の顔・久慈をめざし、山道をくねくねと走る。と、その時、黒くコロコロしたぬいぐるみが車道に転がり出た。小熊。今の時期、冬眠から覚めた熊は小熊を連れている事が多い。すぐに携帯電話を手にしたものの、どこへ知らせたらいいものか。市役所か、警察か。通報すれば小熊の命は絶たれる。放置すれば、人間が危害を加えられるかもしれない。逡巡する間に、小熊は草むらへ消えた。

後日、別の道の駅の小高い丘で、日本カモシカを見つけ驚く家人に、近県から陸送の仕事で来ていた男性が言った。「札幌なら、道端を熊が歩いているのでしょ。」。野生動物と人間の上手く住み分けが出来たら、どんなに良いか。無用の殺生をせずに済む。翌朝、地元紙を丹念に繰った。もしかして、熊の被害が出てはいないかと。 (5月10日 PM2:42 田子町(たっこ)防愛ランド周辺)
14/05/10 道の駅・さんのへ

青森県三戸郡三戸

三戸町は青森県南端と秋田県・岩手県に接する城下町。道の駅は国道4号線沿いにある武家屋敷風建物が目印。ふれあいハウスでは、地野菜や名産品が販売されている。

本日の宿泊地を求め、階上(はしかみ)→なんごうと下見したが、いづれも車が少なく夜は寂しすぎる。結局、いなかだてで会った京都の人が「さんのへで泊まる。」と言っていたのを思い出し、さんのへに決定。

車窓では、満開の黄色い菜の花と真っ白なりんごの花が咲き競う。りんごの花がこんなにも可憐で美しいとは。
4日目   道の駅・くじ泊   曇り時々雨
14/05/11 種差海岸

青森県八戸市東部にある太平洋に面した海岸。

「どこかの天体から人がきて地球の美しさを教えてやらねばならないはめになったとき、一番にこの種差海岸に案内してやろうとおもったりした。」 司馬遼太郎氏をして、そう言わしめた。

荒々しい太平洋からすぐに天然芝が広がり、その先には白い砂浜と松林。青空と波の音は、南仏を思わせるとも。地球上で最も美しく、鳴砂の綺麗な海岸。まさに、絶景そのもの。
14/05/11 道の駅・くじ やませ土風館

岩手県久慈市

NHK朝ドラ「あまちゃん」で一躍知名度を上げた、三陸の久慈市。
道の駅内、物産館「土の館」には久慈琥珀店や地元野菜や土産店、「風の館」では久慈秋祭りで運行された山車や神輿が展示されている。

道の駅・くじ やませ土風館は、旧ダイエーを立て替えたもの。店舗前の第一駐車場は50台程度で大きくはないが、車中泊が10余台と多い。 これも、あまちゃん効果か?じぇじぇじぇ。
14/05/11 三陸鉄道・久慈駅

NHK朝ドラ・あまちゃんで有名となった三陸鉄道・久慈駅。

東日本大震災で分断された北リアス線が2014年4月6日、完全復旧した。復旧前の昨年 訪れた東京在住の愚息は、鉄路が分断された部分を歩いて帰京したのだと。

夏ばっばや春子が働いていた梨明日(リアス)のモデルとなったのが、久慈駅の中にある「リアス亭」。うに弁当は、絶品とのこと。しかし、昼前には完売してしまっっていた。
14/05/11 かだっ亭

まめぶ汁@400円

道の駅から道路を挟んで北側・歴通路広場(レトロ広場)の入り口にあるお握り屋。

かの有名な「まめぶ汁」は、久慈市や九戸郡で食べられる郷土料理。が、意外にも地元では知らない人が多いらしい。「久慈まめぶ汁」は、黒砂糖と胡桃を入れた小さな団子と人参や豆腐・牛蒡・しめじを醤油味で煮たもの。「甘さとしょっぱさが口の中で緊急会議。」。これは、、おかず?おやつ? 口へ運ぶと、これが何と美味いんでないの。団子を作る手間が大変だろうと思いきや、団子の冷凍が道の駅で販売されていた。

最近は、B級グルメとして人気急上昇とのこと。一見の、いや一食の価値あり。
5日目   道の駅・やまびこ館 泊   曇りのち雨
14/05/12 小袖海岸

>夫婦岩

あまちゃんの撮影地として人気の小袖海岸。7月から9月のシーズン中の休日には、海女センターの屋台で、まめぶ汁やうに飯が食べられるため、観光客が押し寄せる。ために、土日は自家用車が通行止め。確かに、こんな狭い道を多くの車が来たら渋滞で収拾がつかなくなりそうだ。明けて月曜日の今日は、店も人影もなくひっそりと。

海岸のシンボル・夫婦岩。震災の津波は、二つの岩を結ぶ縄まで到達したが、切れなかったという。以来、縁結びの神様と言われているそうだ。
14/05/12 龍泉洞

岩手県岩泉町にある鍾乳洞。 7つの地底湖を持ち、水深98mの第3地底湖と水深120mの第4地底湖が有名である。龍泉洞と向かい側に発見された竜泉新洞との共通券@1000円。

世界有数の透明度を誇る龍泉洞の水。その地底湖は、ドラゴンブルーの澄んだ青色。地底を覗き込むと、引きづり込まれそうだ。まさに神秘。洞内の気温が低いせいか、はたまた神秘の成せる技か背中がぞくぞくする。

入り口近く、無料で龍泉洞の水が提供されていた。地底湖から湧き出し、濾過され石灰質が加わった水。思うと、感慨深い。

閑話
熊本の秋山小兵衛

道の駅たろう で周辺地図を探していた家人に「いいの、ありますか。」と後ろから覗き込んだのは、熊本の70代男性。普通乗用車での一人旅。まずは日本海づたいに北海道入りし、太平洋の海岸線を南下しているのだと。旅は早20日目。夕べは函館のホテルに泊まったけど、車中泊をしたりホテルに泊まったりの旅。今夜も風呂に入りたいが、太平洋側には温泉のある道の駅が少なくて。日本海側では行く先々にあったのに。とこぼした。

男性の車には、ナビがついていない。地図を広げて思考し、土地の人をつかまえて聞く。それで、ナビ誘導の私たちと左程の時間的差もなく目的地に到着してしまう。その社交性と眼鏡なしで地図を読む元気さ。まさに、舌をまくスーパーおじいちゃん。

ふと見ると、その車のフロントガラスに一冊の文庫本が置かれていた。池波正太郎の「剣客商売」。主人公の秋山小兵衛を彷彿とさせる熊本の小兵衛は、温泉を求め飄々と走り去った。
14/05/12 たろう観光ホテル

東日本大震災の象徴的建物。下階部分の鉄筋が露出した「たろう観光ホテル」だけが、更地に建っていた。トラックが数台停まっているため、建設現場かと見まごう。テレビで何度も見たこの光景を実際に目の当たりにすると、津波の恐ろしさに震えがとまらない。

ホテルの建物は再生支援機構に買い取られ、自然の猛威を伝える「震災遺構」として残される。高台には、新たな宿泊施設「たろう庵」を建設中。
14/05/12 浄土ヶ浜

三陸海岸を代表する景勝地。

写真・左端の岩上、かすかに1本の木が見える。これが、岩手の「県の木」・ナンブアカマツをはじめとする常緑樹。各所に群生が見られ、海から突き出す白い岩と白い浜と青い入り江、それらが作り出す景観は、あたかも一幅の日本画をひろげたようだ。

海岸に建つ浄土ヶ浜パークホテルは、東日本大震災の折に大きな被害に合ったものの、避難所として地元避難者を多く引き受けたと言う。今は、リニューアルオープンを遂げている。復興なった浜は、何事もなかったかの如く穏やかだ。
14/05/12 道の駅・やまびこ館

盛岡市と宮古市・中間に位置する道の駅。

駐車台数140は、車中泊場所としては合格点。実際に行ってみると、名前通りヤッホーと叫べば「やまびこ」が返ってきそうな山の中。果たしてこのうちの何台が泊まるのか。あまりに少ないと治安が悪そうで不安。夜になり、車中泊は3台くらいと目鼻がついた。安心したら、この道の駅は快適そのもの。

東北は今、山菜が旬。喉から手が出るけれど、山菜はあく抜きが必要なので車中泊では無理。ここで、処理済みの蕨を入手した。1束@100円。醤油をかけてお浸しにして、嬉しい今年の初物。
6日目   道の駅・にしね 泊   雨のち曇り
閑話
コインランドリー

Tシャツ長短袖・各3枚、フリース1枚、長袖シャツ1枚、Gパン2枚、下着・靴下各少々。持参した衣類は、この程度。荷物を少なくするために極力抑えたので、旅の途中で洗濯は欠かせない。本日は朝からの雨模様。コインランドリー初体験と相成った。

まず、全自動洗濯機と二層式洗濯機のいずれかをチョイス。当方2人分、量は多くないので4.7kgの二層式で充分だ。10分@400円。コインと洗剤を投入し、洗い終了。隣の乾燥機へ入れ直す。12分@100円。終了。

切れ目なくやってくる客たちは、家で洗濯をすませ、乾燥だけに来る人が多い。家の中に洗濯物を干さなくてすむのは、有難い。中には、大型ランドリーで毛布を洗う人もいる。羽毛布団だって簡単。しかも、クリーニングに出すのに比べると、ぐんと安価で済み、便利なり。自宅へ帰ったら、うちの羽毛布団も洗いに行こう、コインランドリーへ。
14/05/13 道の駅・にしね 岩手山 溶岩の里

岩手山北東部に長さ3km幅1kmに渡って横たわる焼走り溶岩流。1719年(享保4年)岩手山噴火により流れ出た溶岩が固まった、国の天然記念物である。寒々とした真っ黒な景色は、周囲の緑と対比され荒涼たる暗黒の別世界へ誘われた気分。

その麓・八幡平市の南玄関口に位置する道の駅が、にしね。販売されている地元野菜は、山菜類。後ろの小高い丘には、新緑の木々が生い茂る。 閑話「熊が出たぞ~」の道の駅は、ここ。出没した動物を日本カモシカと教えてくれた陸送中の近県の男性は、もうひとつ貴重な情報を提供してくれた。JR「ほっとゆだ駅」は、駅舎に温泉があって面白いよ。
ひっつみ定食

ひっつみ定食@750円

道の駅のレストランで「ひっつみ定食」発見。

ひっつみは、岩手県の家庭料理。小麦粉を練り、ひっつまんで平たい団子状にして汁に投げ入れる。ひっつまんで作る処から「ひっつみ」。すいとんに似ているが、平らなワンタンの皮状のため、食感は別物。東北は小麦粉を汁に入れる郷土料理が多い。

定食は、蒸した鮭がついた。鮭は岩手の名産品だ。ここは、地産地消を謳うレストラン。 近郊であがった鮭か。期待は膨らむ。焼き鮭で味わいたいものだ。
14/05/13 焼走りの湯

岩手山焼走り国際交流村にある日帰り温泉。国特別天然記念物「焼走り溶岩流」が隣接して広がる。温泉に焼走りの成分が混ざっているかもと、興味津々。が、残念ながら源泉温度が低いため循環加熱。入浴料@600円は、ちと高い。

帰り近く、自衛隊員が集団でやってきた。近くに駐屯地があるのかな。


泉質:単純温泉  低張性弱アルカリ性低温泉  無色透明  さらっとした肌触り、温度はぬるめ。
14/05/13 石川啄木記念館

啄木が詩に託した理想の家をイメージした建物

石川啄木記念館は生誕100年を記念し、生涯愛した故郷・渋民村に建設されたもの。岩手山の膝元。山の全体を、こんな間近に見たことが、かつてあっただろうか。この大自然を毎日目にして暮らす毎日は、どんなだろう。

望郷と漂白の天才詩人として知られる石川啄木は、今も人気が高い。 文学で身を立てようと代用教員や新聞記者の職につくも、赤貧の生活から抜け出すことが出来なかった。 その理由の一端が、消費癖・借金魔・女遊びなど芳しからぬ品行だと言われる。

経済的に恵まれず、文学でも芽が出切れない26歳の短い生涯の中、唯一持っていたのが多彩な交友関係である。金田一京助、与謝野夫妻、夏目漱石、上田敏、若山牧水などがキラ星の如く並ぶ。この人たちが皆、同じ時代に生き啄木と交流があったのか。想像がつかない。


記念館の訪問者ノートを開くと、「あまちゃん」の琥珀おじさん・塩見三省さんの名を発見。撮影の合間に訪れたのかも。
旧渋民尋常小学校の職員室

職員は4人。手前が啄木の机

敷地内には、啄木が「日本一の代用教員」をめざした母校・渋民尋常小学校と代用教員時代に間借りした斉藤家が移築されている。
7日目   道の駅・とうわ 泊
14/05/14 野村胡堂 あらえびす記念館

岩手県紫波郡紫波町 入館料@300円

野村胡堂が「銭形平次」の原作者である事は、意外に知られていない。 が、「あらえびす」(蝦夷のこと)のペンネームで音楽評論家としても有名である。この地に生を受け、経済的理由で東京帝国大学を中退後、報知新聞記者として活躍。その縁が「銭形平次」の執筆に繋がった。以来、作家として音楽評論家として第一線で活躍を続ける。又 後輩たちへの面倒見が良く、胡堂の後押しで世に出た作家は多い。晩年は、自身の遺産を寄付して基金を設立し奨学金制度を制定。経済的に学問継続が困難となった学生たちに、手を差し伸べた。

盛岡尋常中学校での同級生に金田一京助、一期下には石川啄木がいた。啄木に短歌の手ほどきをしたのは、胡堂だったと言う。やがて、胡堂は大学を中退せざるを得なくなり、親友の強い勧めで新聞記者になる。一方、啄木は文学で身を立てるべく、与謝野夫婦を頼って上京する。かくして、共に文学の道へ踏み出した。文学的方向性の全く違うふたり。その後の人生も又、右と左ほども違う。文学への高い志を抱きつつも金銭的には周囲の助けに縋る赤貧の中 26歳の若さで死んだ啄木は、臨終の折「無念だ。」と若山牧水に呟いたが、今や「夭折の天才」としてその名を知らぬ者とてない有名歌人。かたや、人気作家として長く活躍し、趣味の音楽鑑賞を楽しみ後輩たちの面倒を見て、80歳の生涯を閉じた胡堂。何がふたりを分けたのか。文学者として、人として、どちらが幸せだったのか、誰にも解らない。おそらく、本人たちにも。
14/05/14 宮沢賢治イーハトーブ館

右パネル風部分は水が流れるWaterPark

岩手県花巻市  入館料無料

賢治の作品や生き方やその研究論文を収蔵し、一般に公開している施設。宮沢賢治記念館や童話村は、視覚聴覚に訴え賢治の世界を展開するのに対し、イーハトーブ館は来館者自らが心の中に賢治の世界を紡ぎだす所。各々の心象と感性のままに。この静かな大人の空間が、とても心地よい。

「イーハトーブ」とは、賢治の心象中にある理想郷。賢治自身、生涯イーハトーブを求めその世界に生き、人々の心を癒し続けた人生と言っても過言ではない。

館内で常設上映されている賢治原作アニメを、観た。「注文の多い料理店」。注文が多いとは、客からの料理のオーダーが多いのではなく、店から客への注文が多いと言う意味。エスプリの効いた怜悧な皮肉が、小気味よい。一時期の賢治は、魚や肉を絶つベジタリアンな生活をおくっていた。賢治の「命への慈しみ」が、心を波立てる。


宮沢賢治は、災害の年に生まれ災害の年に死んだ。イーハトーブを希求するべくして、この世に生まれ出たのか。
14/05/14 道の駅・とうわ 毘沙門天と萬鉄五郎の里

岩手県花巻市

温泉に魅かれて花巻へ行ってみたが、道の駅がなく車中泊できるのは公園。トイレもイマイチ。ここで車中泊する人は、まずいないだろう。私たちだけだと、治安が不安なので、花巻温泉からも近く温泉があると言う「道の駅とうわ」へやって来た。着いた時には午後5時をまわり、すでに売店はクローズ。温泉さえあれば充分。が、温泉は今日が定休日。何たる運の悪さ。しょんぼりしていたら、家人が満面の笑みで戻ってきた。「温泉、明日は朝湯があるぞ。」。夜、休みと知らない人たちが、湯道具を抱えてボチボチとやって来た。

そうとなれば現金なもの。ここは、なかなかに居心地が良い。駐車スペース71台。釜石道ICを下りてすぐの好アクセスで、観光バスがトイレに寄ったり、人の出入りが多からず少なからず。快適。
8日目   道の駅・遠野 風の丘 泊   曇り
14/05/15 東和温泉

「道の駅・とうわ」隣、JRホテル併設の東和温泉。朝湯は露天とサウナの開放がなく、大浴場のみ。@300円。

元々、北上山系に温泉は出ないと言われるが、ふるさと創生事業による1億円の交付金で温泉を掘り当て、北上山系初の温泉となった。庭のガーデンも見事だそうな。


泉質:単純温泉  低張性弱アルカリ性高温泉 源泉100%かけ流し  湯は極薄茶の透明。
14/05/15 遠野市立博物館

道の左塀内・図書館の2・3階

岩手県遠野市     入館料@300円

「遠野物語」は、日本民族学の貴重な記念碑的文献。このひとつの物語が、遠野の町を奇跡的に残したと言われる。

遠野は沿岸と内陸を結ぶ、馬市で賑わう城下町。重要な流通拠点だった。物資の交流は、多くの物語や情報をもたらし、代々語り継がれた。それを聞き育った佐々木喜善が語り、柳田國男が記した「遠野物語」。そこにある遠野の町は、山々に囲まれ豊かな大自然に育まれた、田舎の原風景だ。

博物館は、遠野の歴史、人々の暮らし、遠野物語の資料など多角的に遠野を読み解く工夫がみられ、見処 満載。なかなかに楽しい。遠野は、菊池姓が多いと言う資料を発見した。何故だ?

第3展示室・ライブラリーで「水木しげるの遠野物語」を 無心で読みふけり、気がつけば読了。本の舞台が、今読んでいる私の足元と言う贅沢。外は、まだ陽が高い。道路脇の茂みがカサと揺れた。「河童か?」・・・.おっと、いけねぇ。すっかり、遠野物語の世界に嵌りこんじまった。


追伸:我が家にも、座敷わらしを一匹所望。
14/05/15 鍋倉城址

本丸址

遠野市街

岩手県遠野市

かつて、遠野は南部1万石の城下町。400年程前、阿曽沼氏から南部氏への統治の変換期、町の治安は悪化していた。伊達領との藩境で重要な地であるため、八戸の根城南部氏が遠野を治めた。しかし、当主・直義は盛岡城に留まらざるを得ず、義母・清心尼が統治にあたる。当時唯一の女殿様は、民に慕われた名君だったそうな。

本丸を中心に賑やかな城下町を形成していたこの地も、今は公園として整備され、墓所と展望台が緑多き町並みと人々の暮らしを見守り続ける。
遠野のグルメ

赤飯
甘納豆ではなく煮豆&味噌漬け1枚


明けがらす@180円
もち粉とゴマと胡桃の菓子


かねなり@100円
小判型のうる粉を胡桃醤油で焼いた物


遠野どぶろく@442円
14/05/15 道の駅・遠野 風の丘

岩手県遠野市

地元でも大人気な道の駅。駐車178台。「大きな風車が目印です。」風車はどこだ。見れば、軸だけが立っていた。羽はどこへいったのだ。只今 修理中?

レストラン、産直物産所、団子屋などが揃い、トイレは超がつくキレイさ。この上もなく便利だ。町を一望するこの景色は、のどかで民話の里・遠野そのもの。しかし、「風の丘」の名前の通り、風の強さが半端ではない。だから、風車か。合点。
9日目   道の駅・厳美渓 1泊目   曇りのち大雨と強風
14/05/16 ほっとゆだ

岩手県和賀郡。

JR北上線の温泉のある駅。「道の駅・にしね」で会った車の陸送の男性、イチオシの湯処。温泉つきの駅舎は、全国的にも珍しい。入浴料@300円。2階休憩室無料。屋根の時計塔の真下・入り口が温泉で、右端の入り口が駅。「ゆ」の暖簾が強烈なインパクトだが、裏にはちゃんと駅のホームがある。

湯船は1つ。熱め・普通・温めの3つに区切られていた。完全な仕切りではないので、上方でそれぞれの湯がざくっと混ざる。なんともアバウト。なのに、この温度差は、どんな仕掛けだ?

浴槽の壁に設置された信号機は、列車の発車を知らせるため。青・45分前、黄・30分前・赤・15分前。電車待ちの間に、ゆっくり入浴が出来る様にとの配慮だ。点灯した信号を見たかったが、列車の発車は1時間に1本程度なので断念。

連日の様に各所の温泉に浸かっているが、ここは絶対に忘れない。否、忘れられない。

泉質:ナトリウム、カルシウム-硫酸塩、塩化物温泉   低張性弱アルカリ性高温泉  無色透明
14/05/16 達谷窟毘沙門堂

岩手県西磐井郡平泉町。

坂上田村麻呂が征夷の記念に毘沙門天を祀った岩窟。

眠気を振り払おうと目を見開いたら、車窓越し 岩に彫られた大仏が視界に飛び込んできた。これは凄い。眠気が途端にぶっ飛んだ。なんでも、大仏の胸から下は明治の大地震で崩落したと。顔丈が3.6m、肩幅9.9m。大地震がなければ全身16.5mが見られたはず。奈良の東大寺の大仏にも勝る。当時、どんな方法でどれだけの時間をかけて、これ程のモノを彫り上げたのか。残念なことに、現在も侵食が進んでいる模様。ただただ、見惚れた。
14/05/16 道の駅・厳美渓

岩手県一関市。

厳美渓・猊鼻渓・中尊寺・毛越寺、いづれへもアクセス抜群な道の駅・厳美渓。それで、ここから離れがたくなったのだが、なんだろう?この居心地の良さは。と言う訳で、3泊も居ついてしまった。
和風もちセット

和風もちセット@880円

道の駅・レストラン「ペッタンくん」で岩手南部の名物・餅を食べてみた。

7種類の薬味?を乗せた餅を前に、さて 何から食べるか?真ん中の大根おろしは、餅なし。いなりは、普通の稲荷寿司。多分、口直しだろう。食べた事のないモノから。まずは菜の花、そして生姜、えび・・・。生姜と菜の花は、新鮮だ。地元産のこがねもち100%使用の杵つき餅は、コシがあり美味い。
10日目   道の駅・厳美渓 2泊目 曇り
14/05/17 中尊寺

金色堂覆堂

安宅の関、勧進帳で義経主従が背負った鎌倉彫の笈

岩手県西磐井郡平泉町 入場料@800円。

中尊寺にある金色堂は、平安時に奥州藤原・初代清衡が建立した代表的浄土教建築。国宝。
鉄筋コンクリートの覆堂内、ガラスケースに納められた総金張りの仏堂はまばゆいばかり。金色堂は、内部に藤原4代のミイラが安置された廟堂でもある。初めてここを訪れた時は清衡のミイラが一般公開されていたのだが、今は痛みが激しいため未公開。

実は建立時の金色堂は、元々野外に建っていたが、1288年 風雪から守るため金色堂をすっぽり包む様に覆堂が建設された。コンクリート造りの覆堂は、興ざめ。

中尊寺の広い敷地には多くの寺があり、 弁慶堂もそのひとつ。弁慶像など関係物が多数収蔵されていた。中でも、勧進帳で義経主従が背負ったという鎌倉彫の笈に目は釘付け。鎌倉彫は室町から桃山時代、木彫りに彩色が施された修験道の笈が関東から北に伝わったと言う。 そのほとんどは、大胆な椿。まさに、これだ。ちょっと待てよ、 義経の死は12世紀。鎌倉彫普及が13世紀となると時代がずれるので、勧進帳に基づき後の時代に作ったものだろう。椿の彩色が、今も見事だ。兄・源頼朝が鎌倉幕府の初代将軍なだけに、鎌倉彫との関連に興味津々。
14/05/17 悠久の湯(平泉)

近くに温泉があると聞き、馳せ参じた。場所は、毛越寺の傍。

料金は3時間以内@500円、3時間から5時間@800円、5時間以上1000円と細かい刻み。こんな所は初めてだ。カラスの行水の私は3時間で充分だが、長湯の家人は「時間が切られていて、気になる。」と言う。帰り、入場時間を記した紙片を入り口の箱に入れて退散。

泉質:ナトリウム塩化物質 低調性弱アルカリ性高温度 無色透明
11日目   道の駅・厳美渓 3泊目   雨
14/05/18 一関市博物館

朝からの雨で、観光は無理。と、道の駅の隣・博物館を覗いてみた。何と本来@300円の入館料が、今日は無料。渡りに船。展示の特徴は、日本刀と解体新書の蘭学。しかし、興味は何と言っても中尊寺経と江戸時代に発達した日本独自の数学・和算。

中尊寺経は、三代目・藤原秀衡が中尊寺に納めた経典のひとつ。藍で染めた紙に金で大般若経が写されている。行間の線は銀。見事に美しい。こんな経典は見たことがない。みちのくに独自の文化を花開かせたい秀衡の願いが、ひたと伝わる。

昨年、沖方丁(うぶかたとう)「天地明察」を読んだ。 これは和算と囲碁の話。本の中に出てくる和算は、難しすぎてことごとく玉砕。館内では和算挑戦が出来、早速挑戦した。家人と力あわせて中級に合格。自販機みたいな機器で賞状を印刷し、頂戴した。面白くて、これは嵌る。
14/05/18 厳美渓

空とぶ団子

厳美渓は岩手県一関市にある磐井川中流の渓谷。天然記念物。

渓谷沿いの桜は、花の盛りはさぞや綺麗だろう。紅葉の季節も。残念ながら、今は桜が終わり躑躅も散り気味。

休憩所のあたり、なんぞ人だかりが。傍へ寄ってみると、「空飛ぶだんご」で有名な名物・郭公だんご。ワイヤーロープで繋いだ籠に代金を入れ合図の板を叩くと、対岸の店からだんごと茶が籠で送られてくると言う寸法。客が引きも切らぬ大繁盛。
12日目   あ・ら・伊達な道の駅 泊   晴れのち俄か雨
14/05/19 毛越寺

大泉が池

岩手県一関市。

道の駅・厳美渓で会った福岡の女性。 「毛越寺は外せないわよ」と強力プッシュ。行った事があるので、今回はパスのはずが、これで方針変更。ちなみに、彼女は苗字が義経。道理で、義経を匿い保護した藤原基衡・秀衡ゆかりの地を勧めるはずだ。

毛越寺は、慈覚大師円仁により開山され、藤原氏二代基衡と三代秀衡が多くの伽藍を造営。往時は40以上あったお堂や塔は全て焼失したが、庭園の遺構が完全な形をとどめ、国の特別史跡と特別名勝に指定されている。尚、池に水を取り込む遣水という水路は平安時代の遺構としては唯一の貴重なもの。拝観料@500円。

以前訪れた時は畔のあやめが満開で、極楽浄土とはこういう所かと唸ったことがある。言葉が見つからない程に、美しかった。今日はまだあやめの時期には早いが、庭内をたゆとう時間はゆったりと穏やかだ。奥州藤原氏の栄華が今も続いているかの如く。
14/05/19 猊鼻渓

岩手県一関市。県道19号線のファミリーマートで割引チケット購入。入園料@1440円。

猊鼻渓は、北上川支流の砂鉄川が石灰岩を侵食して出来た約2kmの渓谷で、日本百景のひとつ。人気の舟下りは、三好ヶ丘で折り返す往復90分の船旅である。両岸は、断崖絶壁。流れが静かな川底では、砂鉄がきらきらと陽に反射する。気がつけば、船頭の唄う「げいび追分」に導かれる様に、大きな鯉の大群がどこまでも船を追ってくる。清流沿いの岩間に咲く藤の花は、今が盛り。奥の藤棚は鮮やかな紫色の大房を幾重にも垂れ、新緑に映えて艶やか。まるで一幅の絵を目にしている様な。

ここへの途中、道に迷って行き着いた東北砕石工場は、宮沢賢治が晩年に技師として働いた所だそうな。
14/05/19 藤島旅館

宮城県大崎市鳴子温泉    日帰り入浴は@200円と@300円があるらしいが何故か@300円支払い。

川渡温泉郷の中でもダントツの知名度。膝に効能大との評判で、湯治客も多いらしい。

2000坪の庭園と聞き高級旅館を連想したが、今時おめにかかれないレトロ。入り口で料金を支払い、靴を片付けていたら別のおばちゃんが出てきて「払った?1時間だから。」と。「脱衣所へ行って服脱ぐだけで、10分や15分はかかるだろう。」と家人。絨毯は長年の汚れが染み、廊下はゴミが散らばり、随所で猫がうろうろ。どこも、不潔っぽい。

ひとつしかない浴槽では、客のでっぷり太ったおばちゃんが、湯の出口にお股を広げてせっせと洗っていた。もう最悪!ただし、硫黄泉で白濁した蓬色の湯は、悪くない。

泉質:旧泉質名・単純硫化水素泉  新泉質名・含硫黄、ナトリウム、炭酸水素塩泉

14/05/19 あ・ら・伊達な道の駅

宮城県大崎市。

宮城県大崎市の国道47号線上にある道の駅。大崎市へ合併前の岩出山ゆかりの伊達政宗にちなんだ命名で、「あ・ら」はフランス語「ala」を引用。 ~風、~流の意味。館内には蕎麦工房、民芸品店、農産物直売所などが揃い、休日には観光客や地元客で大賑わい。四国の柑橘類などが地元野菜と共に並び、四国・宇和島・伊達藩との繋がりが伺われる。

快適な道の駅と満悦していたら、夜、あ・ら 何という非常事態.。トイレの電気工事で2時間ほど使用できないと。使えないとなると、一層いきたくなる。家人を用心棒に、徒歩数分のJR東日本・陸羽東線「池月駅」へ。夜中、誰もいない無人駅もなかなかにオツだ。
Vol.2
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