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09東京・京都 Vol.1からの続きです

2009年 東京・京都旅行記 Vol.2

醍醐寺、築地で日食、そして恵比寿麦酒記念館


旅程
8日目 京都 醍醐寺
随心院
11日目 東京 築地で日食
東京晴海海員会館
築地本願寺
12日目 台東区立下町風俗資料館
恵比寿麦酒記念館
歌舞伎座
NHKスタジオパーク
羽田空港


泊まったところ ●東京晴海海員会館
食べたところ ●ビストロ希味(京都)
●とようけ茶屋(京都)
●うなぎ都川(東京・勝鬨)
●海鮮丼たねいち(東京・築地場外市場)
●恵比寿ウェスティンホテル(東京・恵比寿)


8日目   本日はJR山科駅から徒歩で「醍醐寺」
09/07/19 醍醐寺

准胝さん

秀吉の醍醐の花見で有名なお寺。 三宝院・伽藍(金堂・五重塔)・霊宝館のうち、いづれか2館の拝観が@1000円。

醍醐寺上醍醐准胝堂の本尊・准胝観音は、別名・准胝さんと呼ばれているそうな。 ところが、昨年の落雷により准胝堂が焼失したために、代りに女人堂の観音像を下醍醐・金堂に移した。 家人と2人、金堂内正面の大きな祭壇の前に進み、幾ばくかの賽銭を投入、手を合わせて参拝をすませた。 外へ出て、ひらひらとたなびく「准胝さん」の赤い幟を目にした家人が呟いた。 「准胝さんって、どこにあるの?」。 「え~、今、祭壇の前に、ちんまりと鎮座してたでしょ。見なかったの?」と聞くと、「え?どこで?」。 再び、金堂へと取って返した。 准胝さんは高さ約31センチの木造で、とても小さい。家人が見逃したのも、無理はない。(写真は醍醐寺に貼られていたポスターから)

<三宝院>
醍醐寺の本坊にあたるのが、「三宝院」。 建物のほとんどが重文指定。 庭園を見渡せる表書院は、寝殿造りで桃山時代の代表的建造物。これもまた、国宝指定。 にしても、この物々しさは何だろう。 建物のあちこちで、目を光らせて監視する中年女性たち。 中のひとりが、表書院の襖絵に見入っている私達に声を殺して囁いた。「これは、本物なんですよ」。 今時、どこへ行ってもレプリカが当たり前。 「勿体ない。本物と書いておくといいのに」と私が言うと、彼女は顔をしかめ首を横にふった。 「とんでもない。そんなことをしたら、悪戯されてしまいます」。

今度は、表書院から庭に目を転じる。 この庭は秀吉自らの設計だそうな。 「凄いですね。秀吉が人生をかけて手に入れた地位と財力を挙げて作り上げた庭だけに、 さぞかし満足な思いで眺めていたのでしょうね」というと、彼女は眉を曇らせた。 「ここが出来た頃は、もうボケてましたからね。もしかすると、一度も見ていないかも」。 秀吉の晩年は痴呆気味とも言われ、醍醐寺を復興させた時は秀吉の命の終焉に近い。 庭を楽しむ余裕があったかどうかは、微妙。

しばし、庭の木々をぼんやりと眺めていた。 桜も綺麗だろうが、この木々の紅葉はさぞかし見事なことだろう。 傍らで、件の彼女が右奥の2本の木に視線を送った。 「この2本の紅葉、1本は古木でもう1本は若木なんです。どちらも、それは見事に紅葉するんですけれど。 ただ、古木の方はすぐに葉が落ちてしまうんです。 それに比べて、若木の葉は落ちずに長く木にとどまっています。 若い方は、元気ですね。何だか、身につまされて」

「露と落ち 露と消えにし我が身かな 浪速のことは夢のまた夢 秀吉」
09/07/19 隨心院

小野小町の化粧井戸

隨心院は平安時代の歌人・小野小町の邸宅跡と言われる。 数日前に訪れた六道珍皇寺の井戸から、あの世とこの世を行き来していたと言われている小野篁が、 寺のHPによれば小町の祖父なのだとか。 当時、このあたり一帯に住んでいたとされる小野一族の栄華は、 今も「小野」という苗字が地名となって残っていることを見ても想像に難くない。

随心院は、深草少将が小野小町を慕い、99日通い詰めた伝説の地として知られる。 小野小町あての手紙が千束収められていると伝えられる文塚、 小野小町が化粧に使用したと伝えられる化粧の井戸など、縁のものが今に残る。 千通の恋文とは、さすが絶世の美女はスケールが違う。
閑話・ペイフォワード

外は、バケツをひっくり返した様な雨。あっと言う間に、全身ぬれ鼠になってしまった。 やっとの思いで地下鉄東西線・小野駅にもぐりこみ路線図を見上げていると、 傍にいた30才代の旅行者風の男性が、「これ、良かったらどうぞ」と私達に1枚のカードを手渡した。それは「地下鉄1day」カード。 男性は地下鉄1日券を購入したが、今日の移動はこの駅で終わりなので、カードが不要になった、とのこと。「地下鉄1dayカード」は無記名式で、地下鉄が1日乗り放題で@600円。 たとえば、この小野駅から京都駅までの普通料金は@310円。 傍にいた地元の女性が「良かったわね。1人分だけで済んで」と片目をつぶって、にんまり。

カードを買ったのは私ではないので、どことなく後ろめたさが残る。 京都地下鉄のサイトで「地下鉄1dayカード」について調べてみた。 購入本人に限る、という特記はなく 「乗降は自動改札で」という一項が記載されている。どうやら、 カードを所持している人が1日自由に乗り降りができる仕組みの様だ。金額にすれば京都駅までの@310円を得した訳だが、見知らぬ人から受けたこんなささやかなサプライズが、嬉しい。市の交通局には歓迎されざる行為かもしれないが。

以前みた映画「ペイフォワード」を思い出した。「Pay Forward」とは、「次に渡そう」という意味。 人から受けた厚意や親切を、その相手に返す事はペイバックで、 受けた相手ではない違う人に返すことをペイフォワードというそうな。

投宿中のホテルの最寄駅・京都駅に到着。 改札口で財布を握りしめて料金表を見上げていた若いカップルに近づいて、そのカードを手渡した。 男性はかたまっていたが、女性の方は「え?え、え、え」。 驚きの「え」が、最後の「え」では満面の笑みに代わった。 このサプライズのそも初めが小野駅の男性であることを、この女性は無論知らない。 2人の今日という日が、良い日になりますように。
9日目
今日は、ランチを食べるためだけに当てた贅沢な一日。
09/07/20 ビストロ希味

店の看板がない
ここでいいのか?




店内カウンター

京都市下京区 地下鉄烏丸線四条駅徒歩   仏光寺そば

今日は、ネットで見つけたお店「ビストロ希味」でランチ@3150円。

1階はカウンター席のみで、2階に座敷がある。 シェフは、冷蔵庫からあらかじめ仕込んでおいたタッパを取り出し、皿に盛り付ける。 勿論、カウンターの客からは丸見え。 その上、2階の客の対応もここでするため、盛りつけた料理を奥に渡し、奥の人が2階にお運び。

料理が次々と到来し、料理名を聞いても覚えきれず嬉しい悲鳴。

改めて料理の写真を並べて見ると、皿数の多さに圧倒される。それだけに、慌ただしさはあり、ゆったりまったりと言う訳にはいかないが、ここに来ている人々は、百も承知。 「どんな喧騒の中でも、しっかり味わうゾ」という逞しさが見えた。
10日目
09/07/21 とようけ茶屋

店先は普通の豆腐屋さん風

通し・おぼろ豆腐


奴膳@1150円


湯豆腐膳@1150円


北野天満宮の門前にある有名老舗豆腐店。 リーズナブルなので、昼時は行列が出来る。そのため整理券が配られる。1時間待ちで食べられたら、ラッキーらしい。

元々豆腐を製造・販売する豆腐屋で、「作りたてをここで食べられないか」 との客の希望により、「昼のみの営業」という条件付きの小さな豆腐料理店を、店の3階で始めたのだとか。 当時は「とようけ丼」一品のみの提供ながら大人気を呼び、今日に至る。

今は2階と3階が使われ、私と家人が通されたのは3階席。 テーブル席が4席程と狭い。 天満宮の参詣帰りと思しき家族連れが2組ほど入ってきただけで、 閑散としているのは折からの豪雨のせいだろうか。

気軽に安く本格的豆腐料理を楽しみたい時は、ここがイチオシ。
11日目
09/07/22 閑話・築地で日食を見る

新幹線に飛び乗って、京都駅から東京駅へ。

有楽町から銀座を通り築地で信号待ちをしていたら、あたりの人々が空を見上げていた。 隣で携帯を空に向かって構えていた中年女性が、嬉しそうにひとりごちた。「とれた」。 そう言えば、ここ数日テレビは日食が日本で見られる話で持ちきり。 日食ツアーまで、あるらしい。 件の女性に倣い、恐る恐る仰ぎ見る。が、雲の間に掻き消えて見えず、諦めて歩きだした。

次の交差点。ここでもランチタイムのサラリーマンやOLが、申し合わせた様に空を仰いでいた。 どれどれと、私も再び見上げる。雲の間から太陽が顔を出した。 大急ぎでデジカメのシャッターを押す。 隣の若いサラリーマン氏も、携帯での撮影に成功。 興奮の面持ちで、面識のない私に言う。「いや~、一瞬。一瞬でしたね」

次に見られるのは48年後とか。 これが、生涯最後になるかもと思えば、彼の興奮が良く解る。
09/07/22 うなぎ 都川

晴海の宿に荷物を置き、勝鬨で目に入ったのが、この鰻の店。

年季の入ったご夫婦が2人で切り盛りしていて、店内は狭いながらも70年の歴史が偲ばれる。 店内カウンターの1番奥に陣取り、うな重・丸特(きもすい&浅漬けつき)@2000円を注文。「うまい。」

ところで、この店の敷居を跨ぎ目に入ったのが、カウンターの1番手前に座り、マンガを読みふける背広姿の30代男性。店内の客は、この1人だけ。

手を動かしながら大将が、おもむろに口を開いた。 「ちょっと。漫画読むんだったら、入口じゃなくって後ろで読んでくれないかな」 。 言われた件の漫画の君は、カウンター席の後ろにあったテーブル席へ移って、又続きを読み始めた。 どうやら、自分の状況を読めていないらしい。 それからしばらくして、読書に一区切りついたのか、彼は出て行った。

「ったく、まいっちゃうよ。○○円の丼を注文して、2時間も入口で漫画を読んでるんだから。 お客さんが入りづらくて、皆けえっちまうんだ」と江戸っ子口調で言いながら、大将は苦い顔をこちらへ向けた。 現に私も、彼の姿が視界に入った時は、満員かと思ってしまった。 この程度の規模の店では、稼ぎ時に客の回転が悪いのは致命傷。 客にも、マナーが必要だ。
09/07/22 東京晴海海員会館

部屋からの夜景
中央が54階建てマンション
手前の灯りは隅田川に浮かぶ船

船乗りが航海の途上で東京へ寄港した折りに、家族を呼んで久しぶりの再会を果たすために建てられた会館。 一般にも開放されている。上階はUR公団。銀座から近く、築地市場は徒歩圏内の好立地。 しかも、リーズナブルで和室。昼間も、掃除のために部屋を出されることはない。 20年程前には、朝、魚や野菜販売のトラックが来ていた。

以前は、小さな佃煮工場や鰹節の家内工場が埠頭沿いに立ち並ぶ下町情緒あふれる町だった。 近くに大江戸線「勝どき駅」が出来てからは高層マンションが林立し、 朝夕のラッシュ時には地下鉄駅から大勢のビジネスマンやOLが吐き出されては吸い込まれる様になり、すっかり様変わりした。

東京晴海海員会館は、すぐ近くに新しい建物を建設中。 上京の度に利用していた定宿だけに、この建物への愛着は深い。無くなるのは、寂しい限り。
09/07/22 築地本願寺

浄土真宗本願寺派 本願寺築地別院というのが正式名。

築地場外市場の近くにあり 財界人・芸能人などの葬儀が行われることが多いため、 無意識のうちにその名が刷り込まれている。 建物は、お寺というよりもモスクかと思わせる古代インド様式。大理石彫刻が随所にちりばめられ、重厚にして荘厳だ。

訪れたのは夕方。 ぽつりぽつりと人々がやってきては、本堂の椅子に腰を下ろし静かに本尊と向き合っている。 本堂内には、立派なパイプオルガンがでんと鎮座していた。 定期的に無料ランチコンサートを開催しているのだと。 寺にパイプオルガンの組み合わせは、無国籍的で自由な小洒落た雰囲気を醸し出していた。

家人のトイレに付き合って、地下まで降りてみた。 むせかえる線香の臭いに咳込みつつ重い扉を押しあけると、長い廊下の先に納骨堂が見えた。 そこは、死んだ人たちの世界。重い鉄扉1枚のこちらは、今生きる人々の世界。 期せずして、人間の生と死の境界を行きつ戻りつし、不思議な気分になった。
12日目
09/07/23 海鮮屋たねいち

築地場外市場内

朝、空きっ腹を抱えて銀座方面へ歩く。 朝食は、途中にある築地場外市場内の予定。 居並ぶ飲食店は、そば、ラーメン、焼き鳥など、いづれも垂涎。

私の足は、海鮮丼店の前でぴたっと止まった。 見回せば、隣もその又隣も「海鮮屋たねいち」。 同じ店が、隣同士で営業している。 オーダーしたのは、海鮮丼@1000円。 香り高い岩海苔の味噌汁つき。メインの海鮮丼は、具だくさんでご飯が隠れて見えない。 しかも、生うにまであがっている太っ腹。 ここは、千円札の価値が違う。思わず、うなってしまった。 感激しつつ、朝から運を引き当てた気分。
09/07/23 台東区立下町風俗資料館

風呂屋の番台で照れる家人

風俗・・・一定の社会集団に広く行われている生活上の様々なならわし。 容姿と身のこなし。みなり。(広辞苑)

ここは、正真正銘正しい意味での風俗資料館。 思えば、いかがわしい営業を何故に風俗と言うようになったのか。

台東区立下町風俗資料館は、上野公園の中にひっそりと建つ。 入館料@300円。 1階では、大正・昭和の家屋が再現されており、中に入って家具などに触れると 、当時の時間空間に迷い込んだ様な不思議な気がする。 2階ではお手玉、ブンブン駒など昔のおもちゃが並び、家人と2人で「国旗合わせ」に没頭。 遠くから見守る職員が さり気なくアドバイスをしてくれるのも、いかにも下町らしく温かい。

後期高齢者の集団がやってきて、中の1人が五右衛門風呂の前で 職員を相手に蘊蓄を垂れた。 「昔の家は、みんなこれだったよ。こうやって、火をつけて」。通りかかった家人が加わって、 3人で風呂談義に花が咲く。家人は田舎育ちなので、子供の頃に五右衛門風呂に入ったことがあるそうだ。 親、祖父母、曾祖父母と代々続いて来た日本という国での生活体験を裏打ちとして、 今ここで会ったばかりの人とでも、大正・昭和ノスタルジーを話の種に、楽しい時を共有できる。 見知らぬ人が、旧知の懐かしい人に思えてきた。

13日目
09/07/24 恵比寿ウェスティンホテル

恵比寿ウェスティンホテル



龍天門

今日は、関東圏在住の友達と数年ぶりで会う約束の日なので、家人とは別行動。

待ち合せ場所は「恵比寿ウェスティンホテル」。 JR恵比寿駅を降り立った時から、昨日の下町とは打って変わり、漂う高級な雰囲気に目が眩む。 駅直結の「恵比寿スカイウォーク」を行くと「恵比寿ガーデンプレイス」に着いた。 その目と鼻の先あたりに、目的のホテルを発見。

友達が到着したので、2階の中国広東料理「龍天門」へ。 開店と同時の入店だが、あっという間に満席となってしまった。

今日のお目当ては「ウィークディランチ」@2080円。
①杞子炒蝦仁(クコの実入り芝海老の炒め)
②XO醤ぜん魚(鰻のXOソース炒め)
③糖酷炸肉丸(肉団子の甘酢ソース)以上3点の中から1点をチョイス。

小菜(小鉢)
白飯・搾菜(ごはん、ザーサイ)
即日時令湯(スープ)
杏仁豆腐

友達2人と私の計3人で、主菜はそれぞれ別のものを頼み、分けあって3種類を楽しむことにした。

中国料理店だが、蝶ネクタイで盛装したウェーター氏が、料理を運ぶ度に3人の皿に取り分けてくれる。 さらに、食事も終盤に差し掛かった頃、この後出てくる料理の詳細を伝え、終りが近づいた事をさり気なく知らせる。 こうして、最後にコーヒーが出てエンド。 満ち足りたランチが全て終了し、のんびりと友達との会話を楽しんでいると、 我がテーブル担当のウェーター氏が傍へ来て「今日の料理はいかがでしたでしょうか? ご満足いただけましたでしょうか?」とにこやかに問いかけてきた。 こんな処にも、高級感が漂う。 料理はもちろん美味しかったが、落ち着いた雰囲気もご馳走だった。満足、満足。
09/07/24 恵比寿麦酒記念館

生ビール飲み比べセット
/@500円

恵比寿ガーデンプレイス内  入館無料

恵比寿へ来て、恵比寿麦酒へ行かずして何とする。 1887年(明治20年)に東京・目黒区三田に工場を設けた日本麦酒醸造会社が「恵比寿ビール」の製造を始め、 以来「恵比寿」の名は、駅や地名となって親しまれてきた。 ちなみに、ここは札幌ビールの恵比寿麦酒記念館。 北海道開拓使が作った日本初の官営ビール工場を祖とする北海道の札幌ビールが民間への払い下げ後、 東京・恵比寿で操業していた日本麦酒醸造会社と合併したのだそうだ。 今は、東京・恵比寿が札幌ビール本社となっている。

館内にはビール史やビール探究など興味深い展示が多く、見ごたえがあり興味は尽きない。 お楽しみは、一番奥にあるテイスティングラウンジ。 有料ながら、出来たてのビールの試飲が出来る。 エビスなど300mlの試飲グラスとクラッカー付き@300円。 飲み比べたいなら4種類のビールを味わえる飲み比べセット@500円が用意されている。

五臓六腑に沁み渡る。
09/07/24 歌舞伎座

友達と別れ、銀座から徒歩でぶらぶらと晴海の宿へ向かった。 途中で歌舞伎座の前を通りかかると、今日も入場を待つ長蛇の列が。 来年には建て直しの工事に入るので、只今さよなら公演中。とにかく、凄い込み具合。

歌舞伎を気軽に観られる様に、最上階に「幕見席」が用意されていることを、知る人は少ない。 数年前までは、一幕入れ替えで@1000円だったのだが、いつの間にか@1500円になっていた。(演目によって値段が違うらしいが)

次の公演までの待ち時間は1時間。 以前はこんなに並んだことはない。 が、先日は2時間待ちだったとか。もう2度と、この建物で観ることは出来ない。1時間、待とうか。

・・・長い。まだか。隣の「歌舞伎そば」から漂う鰹節の香りが、胃袋を刺激する。 入場15分前に、スタッフが行列を回って入場料を徴収し始めた。 「立ち席になると思います。ご了承ください」と。 これだけ待って、立ち見か。 入場開始。最上階目指して、走る。やっと辿り着いて入口で切符を渡し、さらに客席へ突進する。 と、なんと、空席発見。座れたよ。ほっと安心して見回せば、私の次に並んでいた人までが席をゲットしていた。 持ってる。今日の私。

佳境に入った頃、ふと思った。何かが違う。クライマックスにかかる掛声がない。 「よう、成駒屋」とか、お気に入りの役者が登場した時に「待ってました」と発する、あれ。 掛声の主は、大向こうという常連さん。 声の抑揚やタイミングなど難しい理があり、掛けるタイミングをはずしてしまうと場を壊しかねないので、 一般人はほとんど声を掛ける人はいない。 と言うか、無理。まさに職人芸なのだ。 掛声によって役者と観客との間に得も言われぬ一体感が生まれるのだが、なぜか1度も掛声がない。 演目によっては、掛声なしのこともあるとは聞いていたが、今日は若手人気役者勢ぞろい。 玉三郎・勘九郎・海老蔵・獅童など、ファンには垂涎ものだろうに。寂しい。

ところで、新しい歌舞伎座に幕見席はあるのだろうか?気にかかる。
14日目
09/07/25 NHKスタジオパーク

渋谷のNHK放送センター内 入場料@200円。

番組作りの舞台裏や過去のNHK番組の歴史などが見られる。 何と言っても人気なのは、NHK昼の番組「スタジオパーク」の公開録画の観覧。 この番組用のスタジオは、テレビ画面から受ける印象とは違って、意外な程に狭い。

次なる部屋では、生放送の疑似体験が出来るとか。小さなスタジオは、本物そっくりだ。客席の中から、今回のアナウンサー希望者を1人選ぶ。選ばれたのは、小学校高学年位の男の子。 ニュース原稿を渡され緊張で顔をこわばらせつつも、カメラに向かって原稿を読み上げた。

淀みなくとは言わないが、なかなかの名アナウンサーぶりにスタジオのあちこちから拍手が湧いた。 何が凄いと言って、カメラ目線でまるで暗記している様にニュースを口にする。 実は、これには仕掛けがあった。モニター画面に、原稿が映し出されるのだ。 道理で、最近のアナウンサーは、放送中に机の原稿に視線を落とすことが少なくなった。 そういう仕掛けだったのか。
09/07/25 羽田空港

屋上

「飛行機のチケットは、安いに越した事はない」。 その結果、この旅は往路が始発便で復路が最終便。 要は目的地に無事到着すれば、何の問題もない。 朝、多少早く家を出て、帰りが夜遅くに帰宅するだけの話。 と、この時まで呑気に構えていた。しかし・・・。

よりによってこの日、新千歳空港は風が強くて着陸出来るかどうか解らない。 新千歳空港上空の状況によって羽田空港へ引き返す事もある、言わば条件付きでの離陸。 万一、再び羽田へ戻る事になれば、すでに深夜。 公共の足は すでになく、 空港ロビーで仮眠という事になるだろう。 それにしても、後がない最終便のリスクを、こんな処で知るとは。

「戻るかもしれないので ご了承願います」と、くどい程に言われ、 1つ前の便が同じ理由で欠航してしまっているので、戻るうんぬんよりも、まず「飛ぶのか」という心配が先にたつ。

不安一杯のずしりと重い心を抱き、たっぷりある待ち時間を持て余し空港内をぶらぶらしていた。 土産物店も見尽くした。 喫茶でコーヒーも飲んだ。 もう、することがない。 あてもなく、螺旋のエスカレーターを道なりに上ってみた。 辿り着いたのは、屋上。 重い藍色に染まった空が視界に飛び込んできて、見知らぬ別空間に迷い込んだような不思議な解放感が湧いて来た。

空の向こうでは、隅田川花火大会の花火が、小さくくっきりと現れては消えていた。 今までいた搭乗ロビーの喧騒が、遠い世界の出来事に思える。 広い屋上には、軽食店もあり、屋外での休憩ブースも用意されている。 端っこの方では、手をつないだカップルが数組、飛行機が飛び立つまでの束の間のデートを楽しんでいた。 飛行機が飛ぶか戻るかなんて、小さな瑣末な事だ。張りつめていた気持ちが、ふっと緩む。
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