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2009年 東京・京都旅行記 Vol.1

川越と祇園祭と♪



09/07/12~09/07/25 東京(川越&横浜)⇒京都⇒東京
日程   息子宅7泊&ウィークリーマンション京都駅前6泊&晴海海員会館3泊

経費 (大人2名)
飛行機代(新千歳⇔羽田) @13600円×2+@14600円×2=56,400円
新幹線( 京都⇔東京) @(12710円×2)×2=50,840円
宿泊(ウィークリーマンション京都駅前) 6泊7日(一室) 27600円+寝具@500円×6泊=30,600円
晴海海員会館) 3泊4日(一室一名@3600円) (3300円×2))×3=19,800円
食費など諸経費 約60,000円
総計 217,640円


旅程
1日目 川越の町並み
2日目 息子宅での鳩対策
3日目 同上
4日目 横浜・中華街
山下公園
5日目 祇園祭・宵宮
6日目 祇園祭・山鉾巡行
六道珍皇寺
建仁寺
祇園祭・神幸祭
7日目 虚空蔵・法輪寺
天龍寺
嵯峨野百景
祇王寺



泊まったところ ●ウィークリーマンションロイヤル京都駅前
食べたところ ●和創菜と四季のすし風凛(川越) 和創菜コース
●たまゆら(京都・先斗町) 味覚ランチ
●大王ラーメン(京都・烏丸五条) ラーメン

この春、息子が東京で一人暮らしを始めた。 「どんな暮らしをしているのだろう。」と家人と顔を見合せていたある日、 定額給付金が家長である家人の口座に振り込まれた。 「銀行に振り込むのもナンだし、直接届けて来ようか?」。 給付金が12000円。家人と2人の飛行機代が50000円。何のこっちゃ。
折角の東京、ちょっと足を伸ばして、京都の祇園祭を見て来よう。 話が膨らんで、2週間の長い旅行と相成った。


1日目
取りあえず荷物を息子宅へ置いて、立川で腹ごしらえ。一息ついた処で、今人気の川越へ
09/07/12 川越の町並み

川越の時の鐘



熊野神社・足ふみロード

NHK朝ドラ「つばさ」で、いま旬の町・川越。 蔵造りの街並みに、江戸の文化と歴史を漂わせる城下町だ。 「小江戸」と呼ばれる蔵造りの町並みは、江戸の町にタイムスリップしたような。

街を散策していたら、熊野神社の前に出た。 鳥居から続く細く綺麗な砂利道は、足ふみロード。 砂利の石は様々な大きさがあり、しっかりと固定されている。 靴を脱ぎ、歩いてみた。「痛い」。石のイボイボが、足裏に容赦なく食い込む。 悲鳴をあげ、痛みから逃れようと体をよじる。歩いて足裏が痛い人は、内臓のどこかが悪いのだとか。 私は足裏全面が痛いから内臓は全部悪いということか? 写真で赤Tシャツを着て苦行?しているのは、息子。 この後、参拝をしようとした家人と私に「俺は、宗旨が違うから」と、息子はベンチで悠々と休憩。 おい、おい、君の宗旨って、無神論ではなかったか?

ふらふらと見物して歩いていたら、五時を知らせる曲が流れた。 ほのぼのと温かい。折角なので、今夜は川越で晩御飯。 先ほど、前を通った時に目星をつけておいた鰻屋さんの暖簾をくぐった。 と言いたい処だが、五時閉店で当て外れ。では、あっちの天ぷら屋さんへ。 と、そこもすでに店じまい。 ここ川越は、五時すぎに開いている飲食店の何と少ないことか。 こんなにしっとりとした町で暮らすなら、早寝早起きも悪くないかも。。

すっかり魅せられてしまった、小江戸・川越。
09/07/12 和創菜と四季のすし・風凛

個室から眺める庭
煉瓦の塀、右側に砲弾の跡が

埼玉県川越市仲町6-4 建物は有形文化財

細い路地の先のこの店に巡り合ったのは、縁に導かれたとしか言いようもない。 趣のある古民家で、庭を眺めながらゆったりと流れる時に身を委ねる。 これぞ、至福。飛び込みで来店した私たちだが、個室へと誘われた。 この部屋、一か月程前から予約が入っていたのが、ついさっきキャンセルになったのだとか。 まるで、私たちのために事が動いていたようで、びっくり。 最高の部屋でいただく料理は、格別。

夜の料理は3900円・5000円・7000円のコース3種。 もちろん、単品もあるが、今日は5000円のコースをオーダーした。

昨夏、食べる機会がなかった「鮎の塩焼き」。 川魚特有の泥臭さが全くなく、潔いほどの爽やかさは涼感いっぱいで、まさに夏からの贈り物。 「湯葉の茶碗蒸し」も珍しい。蓋をとると、透きとおった黄金色が目に鮮やか。 固まり具合はお吸い物のように緩く、上品で涼やかだ。

この建物は、明治の頃、鉄砲店だったそうで、庭には砲弾の跡が今も生々しく残っている。 食事の後、しばし庭に佇む。明治の薫りを胸一杯に吸い込んだ。

5,000円のコース
★鰹の押し寿司
★鱧
★梅肉のせ湯葉


★道産帆立と有機野菜

★刺身
 〇三崎の鮪
 〇焼津のあおやぎ
 〇豊後水道のイサキ


★なんだったかな。

★和歌山県産・鮎の塩焼き

★湯葉の茶わん蒸し

★天麩羅
 〇鱧
 〇茄子
 〇しし唐
 〇ベビーコーン


★寿司
 〇こはだ
 〇うに
 〇海老 他
★すまし汁(豆腐&なめこ)


★ほうじ茶のアイス

川越の地ビール・COEDO(瑠璃&伽羅)

2日目
09/07/13 鳩対策Part.1

息子宅へ辿り着き、びっくり仰天。 「おかんとおとんに見せてやろうと思ってさ。ベランダで鳩が卵を温めているので、そのままにして置いた」 「え~」。眩暈がしそうな私を尻目に、息子はベランダを覗き込む。 すると、母鳩が用心深くあたりの様子を探りながら、卵を抱いていた。 しかも、昨夜は1個だった卵が今日は2個に増えているそうな。 ベランダの網戸には、産毛が付着しているし・・・。

翌朝、鳩の鳴き声で目が覚めた。 「ホー、ホー」って、偉そうに! おまけに匂いが、鼻につく。 息子は「ゴ」のつく虫はカタキだが、鳩にはすこぶる寛容。 数年前に原因不明で死亡した若者がいて、解剖の結果 鳩の産毛が肺に積もったためだったと言う事件を思い出した。 息子が出勤した間に、ベランダのヤツの糞をヘラでこそぎ取る。 これが、かなり大変。というか、飽きる。 マスクをして、作業に没頭。後は塵取りにすくい取り、丹念に雑巾で水拭き。 5階なため、水が流せないというのがキツイ。と、ここまでで一日が暮れてしまった。 帰宅した息子の第一声。「あ、掃除してくれたの?1人では、やる気にならなくってさ。 卵は、もう4回も捨てたった。 食ってやろうかとも思ったけど。おとんとおかんで、鳩退治のアルバイトが出来るんじゃぁ?」・・・。
3日目
09/07/14 鳩対策Part.2

ベランダの掃除も終え、いよいよ鳩対策。 近所を見回せば、ベランダの天井から網を垂らす方法と、ヤツは下から来るので植木鉢を並べる家庭が多いようだ。 どうしよう?網を垂らすには天井のコンクリにフックを打ち込まなければならず、道具がない。 ならば植木鉢を置く?息子がマメに鉢の手入れをするとは思えず、却下。 結局、NHK「ご近所の底力」で見た糸をはる方法に決めた。

釣り糸・ピアノ線いづれも入手出来ず、手に入ったのは設計用の糸。 黄色くて、目立つ。 ベランダの両脇に木を建てて、糸を張り巡らせた。 要するに鳩がとまれる所に糸を張ってとまれなくすればいい。 作業終了。以来、気になってちょくちょくとベランダを覗くが、来訪の様子がない。 今のところ、作戦成功。

後日譚
鳩の帰巣本能には、つくづく脱帽。 この1ヶ月後、鳩は又またやってきたそうだ。 で、出入り口に糸をもう一本追加して張り巡らせたとのこと。 しかし、それでも数日すると隙間をみつけてやってくる。 ベランダの隣家との間を隣家側が塞いでいるので、そこに棒を立てて糸を張ることが出来ない。 そのちょっとした空間をうまく見つけたようだ。 ならば、息子も次の策。 2リットルのペットボトル数本に水を入れて、隙間を塞ぐという手。 今のところ、これで成功しているが、さて次はどんな手を発掘してくるのやら。 いつまで続く息子と鳩の攻防戦。(09/09/04)
4日目
09/07/15 横浜中華街

大小240店あまりの中華料理店がひしめく「横浜中華街」。 広東、四川、上海、点心などの中国各地の美味しい料理店がいっぱい。 中華食材・雑貨の店が連なり、散策するだけで楽しい。

歩いているうちに月餅の専門店・華正楼の前に出た。 「お土産に」と店内へ入ると、そこは当たり前ながらall月餅。ナッツが入っていたり、木の実が入っていたり。、餡にしても白餡・黒餡・生クリーム入りなど、こんなに色々な種類があるなんて。

今夜のお茶うけ用に、今まで見た事もない巨大な核桃月餅@480円(消費税別)を買った。 黒餡の中に混ぜ込まれた塩胡桃が香ばしく、塩味と濃厚な餡のバランスが絶妙。旨い。 
09/07/15 山下公園

豪華客船・氷川丸

視界に飛び込んで来たのは、180度のワイド画面全開の横浜港。 園内の随所に配されたベンチに腰かけ、行き交う船やベイブリッジを眺めていると、 どこか遠い異国へ来たような気分になり、時の経つのも忘れてしまう。

ここは、超人気の横浜デートスポット。 特に夜景がイチオシだが、昼も親子連れや熟年グループの散歩などで賑わう。 地元在住の外人が、ゆったりと散歩している姿も多い。横浜は今年が開港150周年。

山下公園は関東大震災の瓦礫や焼土を埋め立てて造成された公園だと聞く。 私が踏みしめている足の下は、瓦礫ということ。 ゴミである瓦礫に「復興への希望」という調味料を振りかけて熟成を待つ。 人々が愛おしみ、念じつづける底力をつくづくと思う。
閑話

この辺りは「横浜山手町」。 名前の通り小高い丘にある高級住宅街。 横浜市内の住宅情報を覗いてみた。 住所に山手とついただけで、土地の坪単価がぐんと跳ね上がると言われる一帯なのだそうで、 土地だけで一戸分の値段は億単位だとか。 それにしても、日本全国に「やまのて」という地名の何と多いことか。 地名の陰に「高級住宅街よ」というサブタイトルが見え隠れする。 靴底に、高級住宅街の土くれの一片なりとも、くっつけて持ち帰るか。

近くには、フェリス女学院や雙葉学園などお嬢様学校がある。 横道から学校帰りの女子高生の一群が現れた。 折りからの強風で、立っているのもやっとの状態。 彼女たちは、鞄で必死にスカートを押えるのだが、風といえどもなかなかに手ごわい。 1人のスカートが一瞬舞い上がり、下着が丸見え状態になった。 本人の恥ずかしい気持ちは、同性として手に取るように解る。 それで、そっと視線をそらせた。 彼女たちが通りすぎた後、傍らの家人に言った。 「可愛そうだったね」。 「うん」と素直にうなづく家人。 そしてぼそっと一言。「いい眺めだった」○×▽□!
5日目
東京から京都へと新幹線で移動。
(今日からは家人と二人旅)
09/07/16 祇園祭・宵宮

長刀鉾



行者山護摩焚き

今更言うのも恥ずかしいが、山鉾が山と鉾であることを初めて知った。

祇園祭の始まりは、千百余年に疫病が流行したのは神の祟りであるとし、 66本の鉾をたてて祭事を営み神輿を担いで祈祷によって祟りを払おうとしたことによる。

祭りは1カ月にも及ぶが、そのクライマックスが17日の山鉾巡行。 そして、その前夜が宵宮である。 夕方から各町で山鉾を飾り、鉾の前後に無数の提灯を駒形につるし 「コンコンチキチン、コンチキチン」という祇園囃子が流れる。 お囃子が聞こえてくると、理屈抜きで心が踊る。

運良く、行者山護摩焚きに出くわした。 正式名は採燈護摩供(さいとうごまく)。 この山は他と違い、八坂神社の神官による清払いを行わないので、 その代わりに17日に修験道本山・聖護院の山武士が参詣して採燈護摩供を行うのだそうだな。

弓矢や大きなマサカリを振り回し、読経の中で法螺貝が吹き鳴らされ、 護摩木に火が付けられた。凄い煙で、火事かと見まごうほど。 目はシバシバ、喉はゴホゴホ。 山伏たちは、ここへ来るまでに幾つもの山を経巡るので、ここでの護摩焚きは午後からとだけ観光客に知らされた。 見物人は、この時を何時間も待っている。やがて、儀式の開始とともに、空からは雨が落ちてきた。 たださえ暑いのに、火の前で雨に打たれながらの見物。 右手に傘、左手に扇子の見物人達は、着膨れ状態を呈し大混雑。

それにしても、珍しい儀式に、よくぞ遭遇出来たものだ。感激。
09/07/16 ウィークリーマンションロイヤル京都駅前

玄関前の花は、スタッフのおかん作

京都市南区東九条南山王町10

「今年も、宿はウィークリーマンション」と昨年お世話になった所をネットで調べたら、何と閉鎖になっていた。 代わりに見つけたのが、ここ。 2名1室6泊7日で27600円。 寝具が1人分ついているので、2名が泊まる場合は1名分追加でプラス@500×6泊=3000円。計30600円也。 (1人1泊@2550円相当)光熱費などの諸経費が込み。

京都の地下鉄は、東西線と烏丸線の2本。 畢竟、観光が担うバスの比重は大きい。 そのバスは、京都駅が始発なのである。 なれば、ネグラは京都駅から徒歩圏内がベスト。 ここは、京都駅八条東口(新幹線側)より南へ徒歩5分と申し分なし。

どきどきわくわくしながら部屋に入った。 ベッドは、シングル1つと折りたたみ式のエキストラベッド。 家人のエキストラベッド使用感は「全然、問題なし。快適に寝た」。 台所はIH。鍋や食器など、生活に必要なものは一通り揃っていた。 夕食前に室内の洗濯機でGパンを洗い、洗濯乾燥機付きの風呂場に干せば翌朝には穿ける。 汗が流れる様な京都の夏、これは実に重宝だ。

スタッフのブログによると、お風呂は汚れを指で感じられる様に、ゴム手を使わず素手で掃除しているそうだ。 風呂だけではなく、部屋全体の掃除が行き届いていて気持ちがいい。 
6日目
09/07/17 祇園祭・山鉾巡行

綾傘鉾のパフォーマンス

祇園祭の山鉾巡行は「動く美術館」とも言われる。 今年の山鉾は、合わせて32基。 中には重要文化財指定を纏うものもあり、まさに「動く時代絵巻」。

ダントツに人気なのは「蟷螂山」。 通称、かまきり山とも言う。かまきりには、カラクリが施されており動く。 こんな仕掛けは蟷螂山だけで、山鉾の一番人気。

さて、次に目を引いたのは「綾傘鉾」。 子供1人に傘1本をかざす。やがて、赤熊をかぶり棒を持った人が、 太鼓や笛に合わせて踊ってみせる「棒ふりばやし」を繰り広げる。 赤い髪は、熊というより河童に見えなくもない。ひょうきんで楽しい。

山鉾のもう一つの見せ場は、辻での方向転換「鉾まわし」。 一方の車輪を縄で止めて、竹や板を敷き水をかけ、テコを使って車輪を滑らせるという、 ただ山鉾を回すためだけに、気の遠くなる行程を繰り返す。 山鉾巡行の醍醐味を見ようと集まった辻辻の人の波は、凄い。

山鉾の登場を待っていたら、少し後方の若い女性が「やっぱり、そうですよね」とデジカメを手に、家人に言う。 実はその後方にいた老夫婦が「見えないので、これに写していただけますか」と、前に立っていた彼女にカメラを託したのだ。 老妻は、車いす。 聞けば長野から来たのだと。 後ろには、微笑をたたえたご主人が寄り添う。いきなり慣れないカメラを託された女性は、操作に 手こずりあたふた。見かねた家人が言った。 「充電が切れたのかも」。 「やっぱり、そうですよね」は、そのこと。 それを小耳に挟んだ前のご婦人は「せっかく、長野から来たのに」と呟いて体を斜にして車椅子の奥さんを自分の前に入れた。 すると、カメラ撮影を頼まれた彼女は、躊躇いつつ汗を浮かせながら、車いすのご婦人のために席を開けてもらおうと、 最前列にいた若い2人連れの女性の腕にそっと触れた。 しかし、彼女たちは中国人で、言葉が通じない。 そうと知って、周りの人々が身振り手振りで事の次第を伝えた。 中国人女性たちは快く場所を開け、車椅子のご婦人を最前列に招き入れた。

中国人の彼女達にしても、2度と山鉾巡行を見る機会があるかどうかは解らない。 それでも、あの時あそこにいた人々の思いは一つだった。 世の中、捨てたもんでもない。 温かいものが、胸にすとんと落ちた。
09/07/17 あの世への入り口・六道珍皇寺

篁が夜毎この井戸からあの世へ

建仁寺への道すがら、不思議な寺に迷い込んだ。 その名「六道珍皇寺」。 地元の人は「六道さん」と呼ぶ。 この辺りは、死人を野辺送りにする時に通る「死の空間」で「六道の辻」とも呼ばれている。 あの世とこの世の接点。 六道とは「地獄」「餓鬼」「畜生」「修羅」「人間」「天上」の6種の霊界のことである。

ここに祭られているのは、閻魔大王と平安初期の宮廷官人・小野篁(おののたかむら)。 篁は、漢詩は「日本の白楽天」と呼ばれる程の天才学者でもある。 さらに剣術・乗馬などの武芸に秀でた長身のイケメンだったとか。 絶世の美女・小野小町は、篁の娘とも姪とも孫とも言われる。

昼は真面目な公務員の篁も、夜にはこの井戸を通じて冥界へ入り、閻魔王庁で裁判を手伝っていたと。 ならば、この井戸の出口はどこ? 文献によると嵯峨野の某寺の井戸だが、今は廃寺となったとか。 嵯峨野まで地下道を掘ったのか?理解を超えるミステリアスな話に、心躍りわくわく。

六道珍皇寺の近くの店で、「幽霊子育て飴」の看板を見つけた。 「 昔、この近辺で夜な夜な飴を買いに来る女性がおり、調べると身重のまま死んだ女性が、 死後出産した子に食べさせる飴を、幽霊の身になって買いにきた」 昔話・子育て幽霊の発祥である。 ここにも六道ミステリーの香りがプンプン。 昔は「六道の辻よりも東はあの世」と言われていたそうな。 あの世とこの世の間に立つと、背筋を冷たい物がツゥーと走り降りたような気がした。

ここ六道珍皇寺では、毎年8月初めに、先祖の霊を迎える「六道まいり」が営まれるそうだ。 あの世とやらを、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ覗いてみたい。 ただし、出口の井戸を用意してから。
09/07/17 たまゆら

京都市中京区四条通り先斗町。

昨年、鴨川沿いを歩いていたら家人がぽつんと言った。 「一度、祇園か先斗町の店で食べてみたいな」

味覚ランチ(本来は土日メニュー。 今日は祇園祭のため特別) @1575円。


前菜


サラダ


焼き


メイン


はも皮の炊き込みご飯


デザート
前菜 ★汲み上げ湯葉の刺身
★はもの焼きしゃぶと赤ずいきのトマト風味
★伏見唐辛子のさっぱりマリネ(アンチョビソース)
サラダ 京水菜のはりはりサラダ
焼き 賀茂茄子のグラタン(味噌風味)
メイン ★貝柱の網焼き(京しば漬けソース)
★めひかりのフリット
ご飯 白飯(+315円で「はも皮の炊き込みご飯」へ変更可)
デザート キャラメルアイス

料理人との対面式カウンター10席。奥に小さな個室もあり。

店名からして和食の店と思いきや、店内のインテリアは洒落た現代風。 カウンターの向こうで立ち働くのは、20代後半か30代に入ったか位の年恰好のご夫婦。 私と家人がカウンターの一番奥の席に着くと、奥から順に席が埋まり、間もなく満席となった。

料理は、狙い通りの和食で美味。何より、店の雰囲気が洗練されている。この心落ち着く空気は、何だろう。
09/07/17 建仁寺

○△□乃庭

祇園祭の山鉾巡行が午前で、夕方からは八坂神社前に神輿が集結する「神幸祭」があると言う。 すき間時間を利用して、建仁寺へ。拝観料@500円。

広い坊内の中庭・○△□乃庭越しに潮音庭を見渡す。 木の根元が○で、井戸が□。すると、△はどれ?目で探してみるが、解らない。 説明書きによると「単純な3つの図形は宇宙の根源的な形態を示し、 密教の六大思想(地水火風空識)を地(□)、水(○)、火(△)で象徴したものといわれる」と。 訪れる人の多くが、目を泳がせて○△□を探す。

境内順路を歩いていたら、双龍見学を終えた人々と遭遇。 家人とすれ違いざま、イケメン外国人が気軽な調子で声をかけてきた。 しかし、何を言われたか解らず、きょとんとしている家人。 その言葉を頭の中で何度か繰り返したら、はたと閃いた。 今日の家人の装いは、胸に「風流」という文字と波しぶきと鳥が描かれたTシャツ。 これが、外国人には格好よく見えたのかもしれない。 「Nice Tシャツ」と言ったような。 慌てて「サンキュー」と返したら、にっこり笑顔が戻ってきた。 処で、「Tシャツ」って英語かな。それとも、和製英語?
09/07/17 祇園祭・神幸祭

午前中の山鉾巡行を見物し、PM6時から八坂神社での「神幸祭」に出かけた。

祭神を奉じた3基の神輿が一旦八坂神社石段下に集結した後、氏子地域を練り歩き、四条御旅所へ向かう。 ならば、見物のハイライトは八坂神社前だろう。しかし、何と言う人の多さ。なんも見えやしない。 カメラを持った手をめいっぱい持ち上げシャッターを押すのが、やっと。 聞きしに勝る人出だ。 その上、折りからの雨で前の人たちが傘をさし始め、ますます見えない。

掛声とともに神輿が上下し、人垣の隙間から揺れる神輿がちらと見えた。 これを「差し上げ」という。 この知識のネタ元は、その晩MNの部屋で見たテレビニュースから。 現地では、山鉾巡行がリアルタイムでテレビ放送され、神幸祭も最前列の更に前まで報道陣が入り込む。 観客から「見えないぞ。邪魔だ」などと罵声を浴びつつ、身を縮める様にしてカメラを回す。 仕事とは言え、大変だ。そんな訳で、現場で見るよりもテレビで見る方が、より詳細かつ鮮明に見ることが出来た。

ちなみに、3基の神輿はこの後それぞれ祇園、三条通、寺町通、河原町通などを練り歩き、 24日の還幸祭まで四条御旅所に留まるそうな。

あの煌びやかな山や鉾は、この神幸祭で八坂神社に戻ることはない。 山鉾は災いを払うためのものなので、災いを八坂神社に持ち込むことなく、巡行が終わった時点で解体されてしまったのだと。 巡行見物の折り、隣で見物していた男性が詳しく説明してくれた。 随分と物知りなので毎年見ているのかと思いきや、2度目だという。 溢れる興味が知ろうとする意欲となり、彼を「生きる祇園祭字引き」にしたのか。
MNへの帰り道、京都ラーメン初体験。
09/07/17 大王ラーメン

神幸祭からの帰り道、ラーメン店の窓硝子越しに、外人カップルがラーメンを食べている姿が見えた。 ここは、一昨年京都を訪れた時の宿「スーパーホテル京都烏丸五条」の真向かえ。 部屋の窓から見える「大王ラーメン」の看板を眺めつつ「食べてみたいね」と、家人と言っていた所でもある。

店内は、コの字型のカウンター2つのみ。かなり狭いが、客の回転が速いので左程気にはならない。

ラーメン並@580円。スープは鶏がらと豚骨。つゆの色は薄めで、少々豚骨の濁りあり。北海道仕込みの私には、麺が少し細く感じられる。 味の方は、こってり系に見えるが、意外にもさっぱり系。

丼の底をつっつきながら目を上げれば、件の外人カップルが、まだ一生懸命に麺を口へと運んでいた。 箸の文化圏から来た風ではないから、時間がかかるのも致し方なし。とは言え、これでは麺がのびてしまうだろうに。 彼らは麺を1本箸にひっかけて、箸の中程あたりを咥え、その先に垂れている麺の先へと口を迎えにやり、 やっと1本を食べるという行為を延々と繰り返していた。 そのうち、まるでスパゲティーを食べる様にレンゲの上に麺を乗せて箸でくるくると巻き、それに胡椒を振りかけて口へと運ぶ。 何か変。日本人ならこんな時、無意識で麺をすすって食べる。しかし、外人である彼らには「すする」という習慣がないのだろう。

鼻の頭に汗を浮かせて、真剣な面持ちで麺と格闘中のカップルを後にして、先に店を出た。 郷に入っては、郷に従え。異文化は、重労働だ。
7日目
まずは、バスで阪急・嵐山駅に到着。そこからは、足のむくまま気のむくまま。
09/07/18 十三参りの寺・虚空蔵法輪寺

狛犬ならぬ狛牛

京都市西京区嵐山虚空蔵山町16 

「嵯峨の虚空蔵さん」と親しまれている法輪寺は、ご本尊「虚空蔵菩薩」が智恵と福徳、技芸上達の菩薩様として 古来より篤く信仰されてきた古寺。 今昔物語や枕草子にも記述があり、「十三まいり」の寺として往古から有名である。 ちなみに「十三まいり」というのは、生まれた年の干支が初めてめぐってくる年に(数えの13歳)知恵を授けてもらうために、 親子でお参りする慣わしのこと。 始まりは、今から百年も前に遡るそうな。

本堂前には、向かって右側に阿(あ)と口を開けた虎、左側に吽(うん)と口を一文字に閉じた牛の像があった。 阿吽で一対にはなっているが、普通は同じ動物が一般的。 本尊「虚空蔵菩薩」が丑寅年生まれの護り本尊なためというのが、牛虎の理由とか。 神社に狛犬。いや狛虎牛なら解るが、ここは寺。寺に狛虎牛はミスマッチで面白い。
09/07/18 天龍寺

大方丈

参拝料・本堂と庭で@600円。庭のみは@500円。

天龍寺は吉野で崩御した後醍醐天皇の霊を慰めるために、 足利尊氏が高僧夢窓国師を開山として、亀山離宮を禅寺に改めたのが始まりという。 禅寺夢窓国師による庭園(曹源池庭園)が、国史跡・特別名勝第1号。世界遺産。

多くの人々が大方丈の縁側に座り、庭園を見つめる。 私と家人も、ならって腰をおろした。 と、目の前に女性3人が現れて庭園をバックに写真撮影を始めた。 モデルは若い女性2人。 「はい、写しますよ。笑って」と、撮影者の中年女性が言うと、 写される2人組の1人が「大丈夫、美人は美人なりに」と呟いた 。それを小耳にはさんだ私と家人は、思わず噴き出してしまった。 「彼女たちが美人でない」という意味では、決してない。 美人が美人なりに写るなら、ブスはブスなりに写るという文脈になる。 「あ、笑われちゃったよ~」と、私たちの爆笑に彼女たちも大笑い。 火消しに大慌てな私。
09/07/18 嵯峨野百景

竹林

天龍寺を出ると、竹林が現れた。竹が作り出す日蔭は、何よりの涼。

ちょうど、そこへ観光用人力車が通った。 客は若い女性2人連れ。男前の車夫氏が、一生懸命に観光案内中。 もれ聞こえてきたのが、こんな会話。 「この竹がここまで大きくなるのに、どの位かかるか解りますか?」。 首をかしげつつ客の2人が言う。「・・・30年位?」。 すると、得意気に車夫氏が答えた。「1年なんですよ」。「えぇぇぇぇ」。客は驚きで、のけ反る。

感心していたら、隣で家人が「俺、知ってたもんね」とドヤ顔。 竹の成長は非常に早く、それだけに手入れが大変なんだと。 それにしても、家人はどこで仕入れたのだろう、その情報。

鉄道大好きな家人は、「トロッコ嵐山駅からトロッコ列車に乗ってみたい」と言うが、チケットはすでに完売。 評判通りの大人気ぶりだ。 そうとなれば、時間はたっぷりとある訳で、売店を覗き見る。

まずは、腹ごしらえ。売店できつねうどん@350円。 竹林とトロッコ列車を眺めながら箸を動かす。うどんの味は、薄味。小腹が空いた時に、重宝だ。

箸を置いて、売店を見回す。 不思議なもの、発見! 畳んである竹の束を広げると扇子になり、その端同士をくっつけると帽子になる。 さすが、竹の宝庫。
09/07/18 祇王寺

「あれ、この窓、見たことある」と、思った方も多いはず。 これ、祇王寺の庵にある吉野窓。 光の入り方によって、影が虹色に映るという不思議な窓である。 一間っきりの小さな庵の中にひっそりとあるその窓は、ネスカフェの香味焙煎のCMで一躍有名になった。格子の竹の影が虹色に染まっている。紅葉の頃の美しさは、推して知るべし。 (庵内は撮影不可。写真は祇王寺のサイトより)。

祇王寺は、平家物語ゆかりの庵である。参拝料@300円。
白拍子・祇王が時の権力者・平清盛の寵愛を一身に受けて3年。 ある日、仏御前という別の白拍子が清盛の心を奪い、祇王は邸を追われた。 その後、「仏御膳を慰めよ」と清盛に呼び出される。 清盛の心ない仕打ちに傷ついた祇王は、同じく白拍子の妹・祇女と母・刀自の3人で尼となり、 嵯峨の山奥に庵を結び、静かに余生を送った。 ある秋の夜、「祇王の現在が、明日の我姿である」事を悟った仏御膳が尼姿で庵を訪れ、 以来4人が共に住まい、一心に往生を願って念仏を唱えたという。 庵の仏壇には、本尊大日如来像が祀られ、その両脇に清盛、祇王、刀自、仏御膳の木造が安置されていた。

権力を掌握し、全てを思いのままに出来る清盛の驕り。それに翻弄される二人の女たちが、哀れで切ない。合掌。
Vol.2
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