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  2008年京都旅行記 Vol.1

日本発の両切り煙草を発売した「村井兄弟商会」跡・・・東山IVYで自炊生活



08/08/26~08/09/05 日程  フェリー往復泊&新大阪1泊&京都市内7泊
小樽⇔京都(大人2名)


経費
交通費 フェリーチケット(一等個室) 小樽⇔舞鶴 @17,600円(片道)×2名-1,760円(往復割引)×2名=66,880円
宿泊費 東横イン大阪中央口新館   @8,610円(2名×1泊)=8,610円
東山IVY(ウィークリーマンション) @4,180円(2名×1泊)×8日(7泊8日)=33,440円
拝観料&入場料 14,000円
食費 38,406円
交通費 24,060円
雑費 9,685円
総計 〆て  195,081円


行程
1日目 小樽フェリー・ターミナル
2日目 超高速フェリー「はまなす」
東横イン新大阪中央口新館
3日目 東山IVY(ウィークリーマンション)
八坂神社
八坂塔の下商店会
長楽館
石塀小路とねねの道
高台寺
4日目 錦市場
二年坂・三年坂・茶碗坂
清水寺
東映太秦映画村
5日目 太秦駅の仏像・数珠自動 販売機


泊まったところ 東横イン新大阪 中央口新館 大阪市淀川区西中島
東山IVY (ウィークリーマンション) 京都市東山区
食べたところ 長楽館 ランチ
高台寺・雲居庵 抹茶
十駕おおしま 日本料理コース
都そば 立ち食いうどん
開化亭 讃岐きつねうどん

1日目
08/08/26 小樽フェリーターミナル

超高速フェリー「はまなす」

小樽(23:30)→ 舞鶴(21:00)。 夜中の出港なので、日中は何となく落ち着かず過ごした。 午後8時30分、かなり早めに家を出て、さて、旅の始まり。

午後9時を少しまわった頃、小樽フェリーターミナルに到着。 私と家人が乗る予定の超高速フェリー「はまなす」が着岸し、船から降りたトラックが忙しく走っていた。

その時、ターミナル前の道にバイクを止め、暗がりで地図を広げている青年と遭遇。 すれ違いざま「フェリーで来たの?」と、家人が声 をかけた。 今、フェリーを降りて、このまま夜道を宗谷まで走るそうだ。 別れ際「事故に気をつけてね」と言うと、人懐っこい満面の笑顔が返ってきた。 彼が舞鶴から乗ってきたその同じ船で、今度は私たちが彼の来た道をなぞる様に舞鶴を目指す。 ここで偶然会って、彼は北へ私たちは南へと向かっていくのだ。 互いの人生の中での接点は、ただこの瞬間のみ。 そんな一期一会の出会いの妙を、ふと思う。

夏休み中のせいか、帰省帰りの親子や学生、若いカップルなどが多い。 時間が過ぎ行く程に、待合室は人が増え活気づいてきた。 よしよし。これでこそ、出発のときめく様な興奮とちょっぴりの緊張感も湧いてくると言うものだ。
2日目   銅鑼が鳴り、いよいよ船出。
08/08/27 超高速フェリー「はまなす」 往路

乗組員によるサックス演奏
はまなすLive

一等和室
左に畳んであるのが布団。右手前に洗面所

「はまなす」は2,004年就航の新造船で、 船体の全長(224.5m)は日本のカーフェリーとしては最も長い。 航海速力30.5ノット(全速約32ノット)は、現在就航している日本のカーフェリー の中では群を抜く速力。かつて30時間かかった航路を、今は20時間で航海する。シップオブザイヤー賞受賞。

新造の巨大フェリーだけに、豪華設備が充実している。 しかし、 ビュッフェ(バイキング)タイプのレストランは、カフェがクローズしている時間帯に限り営業。 高級コース料理のグリルは予約制で、たまに開店している程度。 出来る限り少ない職員で効率よく回す、という涙ぐましい営業努力が垣間見える。

浴室は、浴槽に超音波ジェットがあり、スチームサウナを付設。 とにかく、広くて気持がいい。 浴槽に肩までつかると、目の高さに水平線が見えた。 フェリーの最大の楽しみはここにあり。

「運賃が安いのでフェリーにした」という人も多い。 確かにこの時期、飛行機は繁忙期料金が適用されバカ高。 それに比べ、フェリーは客室いかんで運賃はピンキリだ。 たとえば2等(雑魚寝)で、9,300円。 2等寝台(2段ベッド)で12,000円。 1等個室が18,000円。特等Aが28,000円。 スイートが48,000円。(2008年9月~2009年3月の料金)

今回、1等個室に決めたのは、「一度経験してみたい」という単純な理由。 和室と洋室の選択を問われるが、「洋室は窓から海が見えない部屋が多い」と聞いていたので、往路は和室に決めた。 期待通り海の見える部屋だったのは嬉しいが、窓から見える甲板にタンクが設置され、視界が遮られるのが玉に瑕。 しかし、それは瑣末な我儘。狭いながらも、ホテルのような部屋での時間は、のんびりゆったりと流れていく。 「少し多目にお金をかけると、こんなに快適なのか」と、つくづく思う。

夕方、乗組員によるサックス演奏が始まるというので、出かけてみた。 「はまなすLive」という。 メンバーは総勢5名だが、勤務の関係で今日は3名。サックス&ドラム&ギター。 「お客様に、より楽しい旅をしていただきたい」との思いから、仕事の合間をみつけてのボランティア演奏会だとか。 サックス担当の人は機関部所属で、仕事は運航とか電気保守など。 この船を動かすための片道の燃油費が1,300万円かかり、トラックが100台&人が200人位乗ると黒字になるとのこと。 ちなみに、今日は黒字。そんなフェリー裏事情を聞いてしまうと 「何とか赤字にならないように」と社員と共に願う気持ちがわいてきた。皆 乗ってぇ。

定刻きっかりに、船は舞鶴港に到着。 フェリーターミナルから21時15分発・新大阪行きのバスに飛び乗った。所要時間2時間。大人@3,000円。
3日目
08/08/28 東横イン新大阪中央口新館

JR新大阪駅正面口徒歩6分。ビジネスツイン一室二名8,610円。 未使用のテレカ2枚まで代金として使用できるので、現金7,610円+テレカ2枚。

今夜の宿・東横イン新大阪中央口新館。部屋は「ビジネスツイン」というちょっと変わった部屋。 ドアを開けると真中にバス・トイレがあり、それを仕切りにシングルベッドが右と左に配置されたシンメトリー・ルーム。 ビジネスマン2人での宿泊なら、1室でありながらある程度のプライバシーが確保されるが、 私と家人ならバス・トイレで仕切られ、逆に部屋が狭くなり使いにくい。 別のテレビ番組をそれぞれに見たら、相手の音が気になって集中できないし。

翌朝は、爆睡して午前8時30分起床。すぐに1Fへ降りて朝食。 無料で、お握り3種・漬物・味噌汁・コーヒーが提供された。 おかずがないシンプルな朝食だが、食後のコーヒーが飲み放題なのは有難い。
08/08/28 東山IVY

東山IVY

フロント横の公衆電話

フロント横のPC
(キーボードが日・中・韓・英)

1988(明治31)年建造。 @4,180(2名×1泊)×8日(7泊8日)=33,440円

「日本で初めて両切り煙草を発売した」村井吉兵衛が作った煙草工場・村井兄弟商会の跡。 建物は、当時のままの煉瓦造り。 今時のウィークリ-は、宿泊料のほかに光熱費とか清掃料とか事務手続き料とか、諸々の経費を請求されるが、ここは宿泊料ぽっきり。2人の場合、1人分の布団代が+になるが、他と比べると群を抜く格安さだ。

部屋は洋室で、バスや台所を除く純然たる生活スペースが10畳以上。 生活に必要なものは全てと言える程 揃っているので、手ぶらで来ても自分のMNの如く気楽な京都暮らしが楽しめる。 宿泊客は中国人が多く、共用部分のPCは大抵 中国語キーボードが設定されているので、 私は都度日本語キーボードを降ろしてblog更新をした。 これは、とても便利。さらに、SKYPEで無料通話もできる多国籍仕様。

朝早く目が覚めた家人は、近所の清水寺・高台寺・三十三間堂などを毎日散歩をして、地元民気分。

あまりの暑さに毎日洗濯をしたが、洗濯機の使用も無料で、洗濯干場に夜干しておくと朝には乾く。 家人いわく「Tシャツの二枚もあれば暮らせるな」。 いつまでも営業しつづけて欲しいが、建物がかなりレトロなので、早晩取り壊しの話も出そうな・・・。
08/08/28 八坂神社

西門(重要文化財)
門の両脇には門神人形が

八坂神社は、素戔嗚尊(スサノオ)を祭神とする全国各地にある神社の名称。 日本全国には約2300社あるとされる。 ここは全国の八坂神社の総本山。 「祇園さん」と親しまれているが、以前は「祇園社」と呼ばれていた。 が、慶応四年(1868年)の廃仏毀釈により、「八坂神社」と改められた。

西門から入るとすぐに現れる鳥居が、疫神社(蘇民将来社)。祭神は蘇民将来。 「蘇民将来の子孫は疫病を免れる」という言い伝えにより、7月31日祇園祭を締めくくる夏越祭が行われ、 これをもって一か月に渡る祇園祭は幕をおろす。 祇園祭には、重要な役割を担っている社という訳である。かく言う私は、まだ祇園祭をみたことがない。
08/08/28 八坂塔の下商店会

八坂塔の下商店会
正面の奥が八坂の塔

東山通りから東山方面に上がると、石畳の道の両脇に30ほどの店が並ぶ。 ここは、八坂の五重の塔へと続く商店街。

中でもその名が人目をひくのが、鮮魚「魚捨」。鮮魚屋なのに、魚を捨てる。 この名をつけた人は、かなり遊び心に秀でたお方か、それとも臍が逆立ちしていたのか?

左の写真・正面がかの有名な八坂の塔。正式名称・法観寺。臨済宗建仁派。五重塔は592年、聖徳太子が建てたとされる。 1179年、火災焼失後、源頼朝により再建され、その後も火災を繰り返す。 現存の塔は、足利義教(室町幕府第六代将軍)により再建されたもの。
八坂庚申堂のくくり猿
   

八坂庚申堂の前を通りかかり、思わず息を飲んだ。 赤・青・黄色、色とりどりの「ぬいぐるみ」のようなものが、賑やかにぶらさがっている。 見れば、絵馬の変わりなのか、それぞれに願い事が書かれている。 これが「くくり猿」という厄除け・多幸を祈るもの。 そう言えば、ほとんどの家々の玄関前には、真っ赤な五匹の「くくり猿」が下がっていた。 「くくり猿」は、この商店会のシンボル。
08/08/28 長楽館

球戯の間
円形テーブルの真ん中にもステンドグラス
周囲3箇所に配されたシュガーポット

旧村井吉兵衛・京都別邸(長楽館)。京都市指定有形文化財。

私が泊まっている「東山IVY」の前身である煙草工場の経営者で「煙草王」と称された村井吉兵衛氏が、 京都別邸として建てたものである。 当時、京都の迎賓館として華やかな舞台となった「長楽館」の命名の由来は、 伊藤博文が木戸孝充の墓参の折に完成直後の長楽館に滞在し、 窓からの風景に感銘を受け名づけたと伝えられている。 来客は、英皇太子・ウェルーズ殿下、米副大統領フェアーバンクス、米財閥のロックフェラー、 山形有朋、大隈重信など豪華な顔ぶれ。 村井の実業家としての成功ぶりが、覗われる。

建物の外観はルネッサンス様式を基調とし、1階部分が石貼り、2・3階部分の壁がタイル貼り。 室内は各部屋ごとに趣を異にし、当時の日本で入手不可能なため海外から取り寄せた家具が、往時のままにさりげなく残されていた。

現在はラグジュアリーホテル・喫茶・レストランとして使用され、ホテルは1泊1部屋@100,000円(2名まで)。 敷居が高いが、喫茶レストランなら気楽に跨げそう。


「ステンドグラスが見たいんですけれど」と言って通されたのが、一階の「球戯の間」。 正面・テーブル・ドアと惜しみなくステンドグラスが施されていて、まるでヴェルサイユ宮殿に迷い込んだよう。

二階にも豪華な部屋が多数あり、各部屋ごとに鏡やシャンデリアなどの家具や絵画が異なる。通される部屋によって、 この建物の印象もまったく違うものになりそうだ。

注文したのは軽食ランチ@1300円。 ホットピタサンドが美味しかったけれど、食後のコーヒー位はセットに加えて欲しい。 終始一貫、この部屋は私と家人の貸し切り状態。大変な贅沢気分だ。

まるで、ヨーロッパ貴族の館のような贅 を尽くした豪華絢爛な部屋で・・・「煙草王」の夢の続きを見る。
円山公園から高台寺へ。
08/08/28 石塀小路&ねねの道

石塀小路



ねねの道

東山・清水寺から、石畳の産寧坂(三年坂) へ入り、二年坂、一念坂(一年坂)と坂道を下りてくると、「ねねの道」につながる。 今日は、長楽館(円山公園)→石塀小路→ねねの道→高台寺というコース。

「ねねの道」は、北へ真っ直ぐに伸びた石畳の道で、正式には高台寺道という。 道の先に、秀吉の正妻・北政所「ねね」ゆかりの寺・高台寺と圓徳院があることから、そう呼ばれるようになった。 「ねねの道」へと続く石塀小路は、京情緒たっぷりの人気スポット。 TVドラマ「京都迷宮案内」のトップシーンで足元を照らす石塀小路の行燈は、あまりに有名である。

小路を抜けると「ねねの道」。「ねねの道」は雨が似合う。 雨音を聞きながら、ねねの生涯に思いを馳せつつ一歩づつ石段を上った。
08/08/28 高台寺

唐傘を開いた様な傘亭の天井

慶長11年、太閤秀吉の菩提を弔うために、北政所ねねが建立した寺。別名・蒔絵の寺。拝観料@600円。

霊屋内の須弥壇に施された華麗な蒔絵は、桃山時代の漆工芸美術として高く評価されている。 なお、霊屋には秀吉と北政所の木像を安置しており、北政所は自らの像の真下、地下6メートルの地に眠る。 ちなみに、夫・秀吉の遺体は本人の遺言により阿弥陀ヶ峰の中腹に埋葬された。 秀吉を支えつづけたねねが、一人ひっそりこの地に眠っていると思うと、切ない。

高台寺・北書院では、圓徳院と同時開催で「百鬼夜行展」が開催されていた。 古来、道具は百年経つと精霊が宿るという云われがあり、九十九年目の精霊が宿る前に捨てる習慣ができたために、 捨てられた道具が化け物に変わって九十九神となったと言われている。 その九十九神が、化けものや妖怪に姿を変えて夜の闇を行列しながら徘徊する様子を、百鬼夜行と言うそうだ。

円山応挙筆の「幽霊の図」や、ユニークな妖怪たちが描かれた百鬼夜行絵巻、 地獄と極楽が描かれた屏風、河鍋暁斎の妖怪屏風などが展示されていた。 ぞっと寒気がする妖怪たちかと思えば、傘亭のお化けや賑やかでユーモラスでお茶目なお化けたちの大行列に思わず吹き出し、 暑さもどこかへ吹き飛んでしまう。書院中央には 金魚が泳ぐ金魚鉢やうちわが置かれ、心憎いばかりのシチュエーション。 こんな陽気な妖怪ならば、百鬼夜行のお供をしてみたい!
08/08/28 高台寺・雲居庵

時雨亭から竹林を抜けて最後の石段を下りると、目の前に見事な庭が広がる。 そこにしっとりと建つ小さな茶室喫茶が「雲居庵」。 メニューは、抹茶&饅頭の1セットのみ。@500円。

お薄と「じょうよ饅頭」。黒い茶碗に鮮やかな抹茶の緑、それに、真っ白な饅頭。 見事な配色だ。加えて、これは「丸」という「形」の共演でもある。 天目台(茶托)の丸の中に茶碗口の丸があり、その中に抹茶の表面の丸があり、それぞれに入れ子状態で丸が納まっている。 横に小さな饅頭の丸。 丸という形の美しさが、心に沁み入るようだ。

お薄はしっかりと点てられていて、期待通り美味。饅頭も、うまい。 抹茶には干菓子を出す所が多いが、やっぱり抹茶は饅頭にかぎる。 飲み終えて、作法通りひっくり返した茶碗の底には「定」の一字。 帰宅後、調べてみて桶谷定一氏作の天目碗と知った。

茶碗は、戦国時代には武将の論功行賞(手柄に応じて賞を決めること)の褒美に使われ、 領地などに匹敵するほどの価値を有するものだった。 一説には、統治者が功をなした部下に褒美として分け与える土地がなくなり、 その代わりに茶碗に付加価値をつけて与えたとも言われている。 そんな話が、頭の中を過る。

日本の芸術に、ちょっぴり開眼した一日。
さて、本日の観光はここまで。 次は、楽しみにしていた日本料理店「十駕おおしま」 へ♪
08/08/28 十駕おおしま

先付け
オクラの寒天寄せウニ

椀物

造り
鯛と鰹と

酢物(おしのぎ)
鱧の寿司

焼八寸


油物
鱧鍋


炊合
小芋と穴子

薩摩芋と銀杏の御飯
&汁物(赤だし)

黒糖シャーベット
&フルーツゼリー


コーヒー


コース外

日本酒・英薫(辛口)

十駕の名前の由来
「驥一日而千里、駑馬十駕、則亦及之矣」  (荀子(じゅんし))
「毎日努力する者が勝つ。」
駿馬は一日で千里を走ることが出来るが、駑馬(遅い馬)も怠らず十日もかかれば千里に達することが出来る。


「創作料理は一切ない、純日本料理の店」と聞いて、事前に予約して行った。 水は名水「桃の井」から汲み上げ、ご飯はその日に使う分だけを毎日精米するという。 地理不案内で早めに店へ向かったために、予約時間よりも早めに着いてしまったが、快く迎え入れてくれた。

一階カウンター席(7席)、一階座敷(16席、坪庭に面した部屋で全椅子テーブル席)、二階座敷(6人掛け椅子テーブルが2組)。 私と家人が通されたのは、一階座敷。風情あふれる庭を見ながら椅子テーブルでゆったりとする。ここは京都の中心部「烏丸御池」。 外の喧騒を忘れさせてくれる静寂さである。

今日は夜の会席コース「想いおもい」@6300円。
一品ごとの端々に神経が行き届いているという印象。どの料理も、美味しい。

焼き八寸は、9/9重陽の節句(菊の節句)・…不老長寿
○卵黄身西京漬け(デンブまぶし)
○鱧&瓜
○もずく
○琵琶湖のゴリ
○ジャコ&万願寺唐辛子ほか

運ばれる料理を堪能するうちに、ふと箸をとめた。 料理はもちろん大満足の美味。 それに加えて、この箸は使い捨て箸だが先が細いので料理の旨味を一層引き立てる。 私が使った箸を、持ち帰っていいかどうかお店の方に尋ねたら、新しい箸を2膳用意してくれた。

町家風の一軒家で、ゆったりと季節感あふれる料理に舌鼓を打つ幸せ。極楽、ごくらく。
4日目

昨日から靴づれが酷い。 見ると、足の指裏に水膨れができていた。 「もう、歩けない」 。幸か不幸か、朝からバケツをひっくり返したような雨。 靴屋の開店時間までMNで雨宿りし、まずは足元を固めることにした。
08/08/29 錦市場

錦市場

錦市場は、京都市の中央に位置する錦小路通の寺町通~高倉通の間の商店街。 魚・京野菜・乾物・おばんざい等、食材はほとんどここで調達できる「京の台所」。 プロから主婦まで、客層は幅広い。

土地勘のない私が「靴」を買うには、どこへ行けばいいのか。 困った時の錦市場。 なんと、全国展開の「ABCマート」が市場の中にあり、無事、新しい靴を手に入れホッと人心地。

市場は、まるで「食材の玉手箱」を開けたように色々な店が詰まっていて、一軒づつ見て歩くと、楽しくて時間があっという間にすぎて行く。 毎日の様に、ここで豆腐・湯葉・漬物・野菜などの食材を仕入れたのに、まだまだ未踏の通りがありそう。

錦市場の東端には、天満天神(菅原道真)を祀る錦天満宮がある。 「学業」と、場所柄か「商売繁盛」にも御利益があると謳われていた。 この辺りを彷徨う時は、いつも食材に目が眩み「錦天満宮」の前は素通りしていた。 何気なく調べていくうちに、面白いものを発見。社務所前に「からくりみくじ」というのがあるそうだ。 人が近づくと神楽が鳴り出し機械仕掛けの獅子舞がはじまり、 硬貨を投入して神籤の種類を英文・和英対訳・子供用など六種の中から選ぶと、 神楽に合わせて獅子が舞いつつ神籤を届けてくれるのだと! 私はこういう「からくり系」が、好き。

次に行った時は、獅子を舞わせて「大吉」を引き当ててくれようぞ !
08/08/29 都そば

錦市場を出て、本日最初の観光・清水寺へ向かう前に、軽く腹ごしらえ。 河原町あたりでぐると見回せば、目の前に立ち食いそば屋を発見。 京阪地区で大阪誠和食品グループが経営する「都そば」。

今回は関西のうどんを食べてみたい。と暖簾をくぐれば、さすが立ち食いだけに注文してから出てくるまでが早い。

「立ち食いうどん」と言えども、つゆは期待通りの薄口醤油仕立て関西風。 濃口醤油の濃いつゆに慣れている私には、とても新鮮。 「この値段で、これは重宝かも?」

他の客の手元を見れば、あれこれトッピングで丼の中はえらく個性的だ。
二年坂・三年坂・茶碗坂
二年坂

七味家本舗

八坂神社から降り、二年坂から産寧坂へと入る所に七味唐辛子で有名な「七味屋本舗」がある。

高台寺から下がってくる二年坂と、西の清水坂と、 東山五丈から上がってくる五条坂の三本の坂が「七味屋本舗」あたりでまとまって一本の道・産寧坂となり、 その道が清水寺へと続く。

二年坂は緩やかなカーブを描く坂道で、その名の由来には二説がある。
①三年坂より小さな坂であるため。
②大同二年に出来たから。

三年坂で転ぶと三年で、二年坂で転ぶと二年で死ぬという言い伝えがあるそうだ。足元ご注意。

茶碗坂

茶碗坂

清水というと「産寧坂」を連想する方が多い程、今では国際的な人気観光スポット。 観光客と修学旅行生でごった返す。 そんな中、隠れた穴場がこの「茶碗坂」。

その昔、多くの陶工が腕を磨いた街で、なるほど今も清水焼の店が軒を連ねる。 坂の上から朱い三重の塔が街を見下ろし、実に閑静。 五条坂や清水坂から産寧坂へと通じる道とは一本違うだけなのに、 しっとりと落ち着いた雰囲気は、それらの道とはきっぱりと一線を引いている感が強い。

焼き物は勿論、扇子の専門店などもあり、静かに散策を楽しみたい時には、お勧めのとっておきスポット。

三年坂(産寧坂)

五条通りから清水へ登っていく五条坂→産寧坂のコースは、超有名人気観光コース。 シーズンには観光客や修学旅行生で混雑する。

京の宿 清水山荘
前を通りかかっただけだが、建物の入口はずっと先らしい。 町家風の宿のようで興味津々。 HPを除いてみたら、ここで「片泊まり」という言葉に遭遇した。 朝食だけがつく宿泊という意味だとか。片旅籠と同じ意味だそうだ。 恥ずかしながら、私はどちらの言葉も知らなかった。 京という町にしっくりと寄り添う様な“はんなり”とした語感が、古都には似合う。 1泊朝食@6,300円(税込)(2名1室)。

瓢箪屋:小物のお店
江戸時代の天保8年(1837年)の創業。 その名の通り、大小さまざまな手作りひょうたんが店内に所狭しとぶら下がっている。 この瓢箪、元々は清水寺の「音羽の滝」の水を汲むためのものだったが、今では縁起物として売られている。 三年坂で転ぶと三年で死ぬという伝説があり、転んでしまった時はここの瓢箪を買うと 、角がとれて丸く収まるという厄よけの効果で死なずに済むそうだ。 まねき猫もこの店の人気商品のひとつ。 店先で店の外から中をのぞく猫が、とても可愛い。

明保野亭(あけぼのてい)
明保野亭は、幕末に志士達の会合がしばしば持たれた料亭で、歴史の舞台でもある。 明保野亭事件は、幕末の京都で長州系浪士の誤った捕縛により土佐藩士が傷害・切腹し、その責任をとって会津藩士が自刃した事件。 現在は、わずかに茅葺きの門だけが当時の面影を伝えているが、跡地で石碑と共に店舗が現存する。 当時は旅籠も兼ね、坂本龍馬の常宿だったと伝えられている。ここの「龍馬御膳」、食べてみたかった。

京仏具・山口屋:数珠を中心に仏像、仏具、線香などを商う老舗
お香の香り漂う店内は、信心が皆無に近い私ですら厳かな気分になる。 ここで、数珠を購入した。品数豊富で迷う。
あれこれと道端に連なる店などを覗くうちに、産寧坂の先・清水寺に到着。
08/08/29 清水寺

清水の舞台

拝観料@300円
清水寺の開創は1,200余年前、奈良時代末の778年(宝亀9)。 延鎮(えんちん)上人が夢告をうけ、音羽の滝を尋ねあてて行叡居士(ぎょうえいこじ)に逢い、 霊木を授けられて音羽観音を彫造し、滝上の草庵に祀ったのに始まる。(出典Wikipedia)。 境内は清水山中腹にあり、多くの建物が軒を連ねるようにみっちりと建ち並ぶ。 中でも、「清水の舞台」と名水が三本の筧から流れ落ちる「音羽の滝」は、有名。 さすがに、ここは長蛇の列。

仁王門をくぐり西門を抜けると、「隋求堂」の前に出る。 「隋求堂胎内めぐり」という立札を前に、カップルが入るかどうか思案していた。 胎内めぐりとは、地下や洞窟などに造られた霊場を、仏の胎内に見立てて参拝すること。 清水寺の御本尊、十一面千手観音像の33年に1度の一般公開、御開帳にあたる2千年を機に始められたそうだ。

随求堂の中には随求菩薩が奉られているという話だったが、一歩足を踏み入れると、 何も見えない真っ暗闇。すり足で、地下への階段を進む。 暗闇の恐怖のため手探りのおっかなびっくり。 これでは、せっかくのひんやりとした空気も、寒気に近い。 出口まで続く左手の数珠の綱だけが頼りだ。 それだけでは心細くて、家人のシャツの端をしっかりと握りしめる。 あった、随求菩薩。その下にぼんやりと光に照らされた、これが随求石。 随求とは「衆生の願い求めにすぐにしたがって、すべて叶えてくれる」ということである。 拝むと願いが叶うらしいので、家人のシャツを放し慌てて手を合わせた。 後続の若いカップルは、女性が何度も悲鳴をあげ男性にしがみついている模様。 私の進み具合が遅いので、男性が私に蹴っつまずいた。

出口のあかりを見つけ、ほっとしたのは言うまでもない。 靴を履いていたら、係の女性がにやにやと後続カップルの男性に声をかけた。 「どうでした。良かったでしょ?」。 件の男性は、嬉し照れ臭の笑顔で「えぇ、よかったです」(鼻の下が伸びてるよ~)。 私ですら、家人がやけに頼もしく見えたもの。恋愛中のカップルなら、推して知るべし。
5日目
08/08/30 東映太秦映画村

今、撮影中の作品

入村料@2200円

東映が1960年代からの映画の斜陽化に遭遇し、ヤクザ映画で収入を確保する一方、 斜陽の時代劇オープンセット維持のために京都撮影所のオープンセットを新子会社「(株)東映京都スタジオ」に移管し、 東映太秦映画村として昭和50年にオープンしたテーマパーク。

入口に一歩足を踏み入れると、明治の町・江戸のお屋敷・宿場など、過ぎし遠き時代へタイムスリップ。

吉原通りの遊郭で、花魁と記念撮影。先客の家族連れは、年配のお父さんが照れながら2ショット。 私も、退いてる家人をけしかける。 「もう、生涯こういうチャンスはないんだから。ね、写しておいたらいいよ」。 すると、先客のお母さんが「がははは、そりゃそうやわ。花魁と遊ぶ程のお金あらへん。 もう、2度とこんな機会、あらへんわ」と、大笑い。・・・だよね。

どの街並みも映画やドラマで以前出会った懐かしい風景。 扮装して立っていると、もう、それだけで撮影が始められそうだ。 驚いたことには、各建物の裏と表が全く別のセット。 たとえば、本物の蕎麦屋の裏側は2階屋の旅籠で、前には細い川が流れている。 まるで「御宿かわせみ」の「るいさん」がひょいと飛び出してきそうだ。 あれは、東映作品ではなかったか?

開化亭

開化亭

きつねうどん

東映太秦映画村の入口を通って、「明治駅」のセットをくぐると正面が明治通り。 その道沿いに数軒の飲食店が連なっているが、セットなのか本物なのか、いささか判別に迷う。 その中の一軒が「さぬき手打ちうどん・開化亭」。 店内は外見同様、少々レトロっぽい。 私は「きつねうどん」@680円。鰹の香り漂い、旨い。 と、数回箸ですくって口へ運んだら、早どんぶりの底が見えてきた。 運ばれてきた時から、特に大きい訳ではない丼に、汁込みで半分強くらいの嵩だったのだ。 これは、ちょっと少なすぎでしょう。大盛りにすれば良かったか。後悔が後から追ってきた。

早々と完食してお茶をすすっていると、あちこちからお茶を催促する客の声が飛ぶ。 忙しくて手が回らないのか、要領が悪いのか。

支払いをしようと立ち上がると、店員がレジにぱっと飛んできた。これだけは、やけに手際がいい。
夜は宮廷鵜飼を観賞予定。太秦を後にし、京福電鉄嵐山線で一路嵐山へ。だが・・・。雨で催行中止。
08/08/30 太秦駅の仏像・数珠自動販売機


嵐電が走るこの太秦駅にも、ホームに古い民家が建ち並んでいた。 そこで不思議なモノ発見。「数珠と仏像の自動販売機」。

この自動販売機の歴史は古く、遠く前世紀に遡ります。 太古の時代、店主は駅の中の民家を譲り受け、電車を窓から眺めてはにやにやしておりました。 その民家には朽ちた煙草の販売機があり、煙草を売ろうかとも考えましたが、煙草は体に悪いので売らないことにしたのです。 そこで何を売ろうか思案した結果、衆生に幸福をもたらす縁起を近代的な自動装置にて提供することにいたしました。 この縁を尊ぶ御方は遠く太古の太秦の歴史に感慨を深くされるでしょう。店主拝復
なお、この装置は欲がなく、千円、五百円など高額の紙幣をうけつけませんので、 右のバリアフリー型装置でおみくじを買うことで両替して百円玉を投入して下さい。

五百円紙幣なんて、今の時代、誰が持っているのだ? 商品の数珠や仏像の価格は700円・800円・1000円。 たとえば、1000円の数珠を買おうとするなら、隣の自動販売機でおみくじを買って 100円玉を10個確保しなければならない。 1000円札でおみくじを買えば当然おみくじ代金100円を引いた残金900円が戻ってくる訳で、 1000円分の100円玉を確保するには、おみくじを2回購入して両替しなければ ならない・・・のかな? そうまでして買う人がいるとは、思えないが。 これは、店主の趣味で設置しているブラックジョーク? ちなみに、仏像は日本のそれではなく、インドかどこかの仏像っぽい。 電車待ちの人たちが立ち止まっては自販機を見つめ、一度離れては又戻ってくる。 何だか気になるのよね。
Vol2
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